ではなぜ、このRubyがICT教育に活用されるようになったのか。
そのきっかけは、2005年にさかのぼる。この年に行われた国勢調査で、松江市の人口が減少に転じたことが明らかになった。人口減少の一因には、産業の反活性化が挙げられる。産業を活性化させ雇用を創出するためには、企業誘致が必要。ところが、地方都市である松江市には、企業誘致にさける大規模な補助金はない。そこで目をつけたのが“人材”。そして人材を育成するために着目したのがRubyだ。
設置した拠点で中学生に教える
まず、市内の島根大学、松江高専の両学で開催される「Rubyプログラミング講座」に助成。これは、就職を控えた人材から育成していこうという考えだ。次に松江駅前に設置した「松江オープンソースラボ」を拠点に、「中学生Ruby教室」「Ruby Jr.」を開催した。人材の裾野を広げるほか、IT分野に興味を持つ中学生を早期に発掘する試みもある。
やがて2012年になると学習指導要領が改訂され、中学校技術・家庭科で「プログラムによる計測・制御」が必修化された。これをきっかけに実証授業を繰り返し、2016年には私立中学校全校でRubyによる授業を開始。なお、中学生が利用するのは「スモウルビー」という、アイコンボタンを並べ替えてプログラムできる機能を備えたプログラミングツールだ。
そして2017年3月には小学校でのプログラミング必修化が決まった。これを受けメンター(指導者・助言者)の育成、子どもたちの理解につながる教材作成に取り組んでいる。
なお、松江市とは関係ないが、島根県のある場所で行われた民間企業によるスモウルビーを使ったプログラミング教室を見学したことがある。対象は小学生だったが、スモウルビーに興味津々のようで、歓声を上げながらプログラミングを楽しんでいた。