スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「USB PD」についてです。

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USB PDは「USB Power Delivery」の略で、1ポートあたり最大100W(20V×5A)の電力送出が可能なUSBの電力供給規格です。従来のUSBにも電力供給の規格は存在しましたが、USB 2.0では2.5W(5V×0.5A)、USB 3.0では4.5W(5V×0.9A)までに制限されていました。最大7.5WのUSB BC(Battery Charging)という規格もありますが、ディスプレイなど消費電力の大きいデバイスを駆動させる目的のため、USB PDが策定されました。

USB PDの特長の1つは、供給電圧が5Vのほか9Vと12V、15V、20Vの計4種類用意されていることです。60Wまでは最大3Aまで出力し、60Wを超える電力供給が必要な場合に最大5Aを出力します。ただし、出力が60W以下(電流が3A以下)の場合は端末と電源の両方がUSB PDに対応し、60W以上の場合は端末と電源、ケーブルのすべてが3A以上のUSB PDに対応している必要があります。

双方向に給電できることも特長です。従来のUSBでは、ホストからデバイスへの一方向でのみ電源供給されましたが、USB PDでは反対のデバイスからホストにも供給できます。スマートフォンがホストで外部ディスプレイがデバイスとすると、従来はスマートフォンのバッテリー残量を気にしながらディスプレイを使わざるをえませんでしたが、USB PDでは外部ディスプレイから電力供給を受けつつスマートフォンを利用できます。

USB PDはUSB 3.1 Type-C、USB 2.0 Type-Cの両方に対応しています。GoogleがNexus 5X/6P以降のAndroid端末でUSB Type-Cを採用しているほか、2015年以降のMacBookなどUSB Type-Cポートを電源供給源とするパソコンも登場していますから、今後はパソコンとスマートフォンで共用できるバッテリーや充電器が続々登場することでしょう。

USB PD対応のバッテリーや充電器が増えています(写真はAnker PowerPort Speed 1 PD30)