さて、こうしたクアオルトに企業の視線が注がれ始めている。上山市を例にみてみると、まず2016年10月に太陽生命が包括連携を締結。そして、2017年6月には損保ジャパン日本興亜ひまわり生命(以下、ひまわり生命)も、上山市との包括連携の締結を発表した。奇しくも保険事業者がクアオルトに着目したワケだが、これは偶然とは思えない。ひまわり生命の例でみてみよう。
生命保険企業の在り方を変革
ひまわり生命 人材開発部長 下川亮子氏は、「生命保険会社の役割を変えていかなくてはならない」と話す。どういうことかというと、そもそも生命保険は、契約者が疾病したり、万が一の場合が起こったりした際、保険金が支払われるという仕組み。だが「保険金も大切だが、長いあいだ、健康でいることこそ重要」(下川氏)という。
こうした考えのもと、ひまわり生命は中期経営計画において「健康応援企業」への変革を宣言した。そのためには社員の意識改革が必要で「社員とその家族が健康維持・増進」→「健康への意識・知見を高め企業文化を構築」→「顧客に対し健康を軸にした価値を提供」というステップで、国民の健康を応援していくのだという。
すでに社員全員にフィットネスをサポートするウェアラブル端末「Fitbit」を配布。これは業界初の試み。さらに「プレミアムフライデーズ」を導入した。経済産業省が主導する施策と異なり“ズ”がついているのは、「弊社の場合、締め日が月末。月内最終週の金曜日では利用できない社員が多くなってしまう。そこで月内のどの週の金曜日でも午後3時に仕事を切り上げられる制度にしたため“ズ”をつけた」(下川氏)とのことだ。
そして、今回のクアオルト活用という健康維持・増進施策が続く。同社には約3,200人の社員がいるが、その全員に1泊2日のクアオルト体験を行ってもらうとしている。
では、本当に約3,200人もの大人数がクアオルト体験を実行するのか……そのための休暇や費用はどうなるのかという疑問がわく。経済的負担からクアオルト体験を敬遠する風潮が生まれかねない可能性もある。この筆者の疑問に下川氏は「特にクアオルト体験用の休暇はないが、費用は会社が一部負担する。まだ緒に就いたばかりなので全社員に体験してもらえるよう、いろいろ取り組みたい」と答えた。さらに下川氏は、「クアオルト体験施策は“福利厚生”の一環ではなく“経営理念”」と強調した。