テレビ事業の利益率改善

また、テレビ事業の利益率改善も課題となる。

「テレビ事業は、限界利益率の改善と、2015年度までの構造改革の完了で、利益は良化している」とするものの、ソニーが2016年度実績でテレビ事業の営業利益率5%を達成しており、パナソニックのテレビ事業の利益率はそれを大きく下回る。

本間社長は、「ソニーが、テレビ事業において、営業利益率10%を目指すと宣言したことは感慨深い」と前置きしながら、「パナソニックは、テレビ事業に関しては、具体的な販売目標を掲げるようなビジネスではないと考えている。また、最も大きなコストを占めているパネルを調達するという体制では、5%の営業利益を出すのはたやすいことではない」とする。そして、「全体の経営を考える場合に、そこに高いターゲットを置いて、全体を狂わせては戦略を誤ることにつながりかねない。達成可能な現実的な目標を置いて、毎年、少しずつ良化していけばいいと考えている」と語る。

それにも関わらずテレビ事業は継続する意思を見せる。

「家電の販売プラットフォームを持つ上で、テレビ事業を持つ重要性はある」とし、「家電事業が文化の事業であるのに対して、テレビ事業は文明の事業である。顧客価値を認識してもらうもので、各地域でそれをどう訴求するかが重要だ」とする。

4K有機ELテレビ「ビエラ TH-65EZ1000」

パナソニックが成長戦略のなかにテレビ事業を位置づけていないのは明らかだが、収益改善は当面の課題であることに間違いはない。

BtoB事業の地盤をいかに早く構築できるか

そして、もうひとつの課題が、BtoB事業の地盤づくりだ。

パナソニックの利益拡大において、BtoB事業は重要な鍵になり、本間社長も、「将来において、BtoB事業は高い利益を確保できるビジネスだと考えており、高収益化への推進を加速していきたい」と語る。

だが、現時点では、「地域別販売体制を確立している段階にある」のが実状だ。利益成長に向けた改革として、冷機コンプレッサー事業の本社機能をシンガポールに移転したのもそのひとつだ。

ここでは、M&Aを含めた非連続の成長戦略や、IoTを活用することで事業基盤を強化するといった取り組みにも挑む。増収増益を加速する体制づくりを早期に構築できるかが鍵になる。

2つのリスク

さらに、本間社長は、成長戦略におけるリスク要因として、「2つの課題がある」とし、「鉄やアルミニウムなどの原材料費の高騰による収益性の阻害」、「労働力の逼迫と、それに伴う人件費の増加」をあげる。

こうした外的要因をにらみながら、収益拡大への舵取りを担う必要がある。

本間社長は、「過去2年続けて、すべての事業で増益となった。成長ドライバーは、どれかひとつの事業というよりも、すべての事業を増益させることにある。2017年度もすべての事業で増益を目指す」とする。

アプライアンス社では、非連続投資を行いグローバルな成長を目指す「高成長事業」にエアコン、食品流通、スモール・ビルトインを位置づけたほか、安定的な収益拡大を目指す「安定成長事業」には、洗濯機、冷蔵庫などのメジャー家電や、コンプレッサーなどのデバイスを位置づけ、リスクを最小化し、黒字化の定着を目指す「収益改善事業」には、テレビやデジカメなどのAVCを位置づけている。

パナソニックの家電事業全体では、この2年で営業利益を2倍に拡大してきたが、さらなる利益拡大に向けた一手を、国内外において打つ考えだ。2018年度の創業100周年に向けてのラストスパートがかかりはじめた。