成長のポイント:海外事業の拡大

もうひとつの成長戦略の軸が海外事業である。

パナソニックは、ここ数年、米国および中国からのテレビ事業の撤退により、海外売上げ比率が減少。現在、国内外の比率は54対46となっている。だが、数年後にはこれを逆転させ、海外が半分以上を占める形になることを目指す。つまり、家電事業の成長には、海外事業の拡大が鍵になる。

とくに、アジア、中国は、それぞれAPアジアおよびAP中国を設立。権限と責任を委譲した「前線化」によって、現地主導型の経営体制を確立。この成果がようやく発揮されようとしているところだ。

「アジア、中国では、ラインアップを刷新しているため、これらの地域での収益性が劣るように見えるが、この1年で収益が刈り取れると感じられるところまで到達し、十分な力がついてきたと判断している」2017年度には、アジア、中国において、5%台の営業利益率を目指す考えだ。

中国では、ECサイトを通じた販売が増加していることから、ECサイトと一括商談を行う電商本部を新設。さらに、「旺盛なインバウント需要の影響もあり、パナソニックの理美容商品に対する認知と評価が高まっている状況を捉え、スモール家電を中心としたプレミアム戦略を推進。外資系白物家電ブランドナンバーワンの獲得を目指す」と語る。

ナノイーを搭載したドライヤーをはじめとするスモールアプライアンスも、中国で高い評価を得ており、2万円を超える製品が売れ筋になっているという。

とくに中国では、「軽厨房」ブランドによるスマートキッチン群を、2016年9月から発売。スマホと連動したIoT家電として展開することで、プレミアム比率を高めることに成功している。

「軽厨房シリーズは、来月までに商品が出揃う。冷蔵庫、洗濯機、炊飯器、圧力鍋、ベーカリー、IHグリルがひとつのアプリが操作できるようになっている」とし、「IoT家電は、中国が最も手応えがある。中国では、多くの人が、朝から晩までスマホを手放さない。また、IoT家電に対する価値を感じて、そこに対価を支払っている。中国で成功した商品のなかで、日本でも受け入れられる商品や、そこに価値を感じてもらえる商品があれば、順次、日本にも投入していく」と語った。

また、アジアでは、ベトナム、インドネシア、フィリピンで家電ブームといえる状況に入っていることを指摘。「エアコンが一般消費者の購入できる価格帯に入ってきた。マレーシアのエアコン生産拠点に加えて、新たにタイの生産拠点で、50万台体制でエアコンの生産を開始。さらに、クアラルンプールのアジアデザイン拠点の機能を強化する」などとし、アジアでの体制強化をさらに加速させている。

そのほか、インドでは、地域とAP社の共同責任経営のパナソニック インド アプライアンスを設立。ジャジャールへのR&Dセンターの開設や、バンガロールでのオフショア開発部門の開設に加え、2017年度第4四半期から、インド国内で冷蔵庫工場を年間50万台体制で稼働する計画も明らかにしている。

各地域の収益性と成長性向上のロードマップ

だが、いくつかの課題もある。

ひとつめは、海外事業における収益性と成長性への取り組みだ。

本間社長は、「海外では、一部赤字の地域があり、さらに、パナソニックが弱い領域も多い。海外家電事業の収益性と成長性は、業界水準には見劣りする」と語りながら、「日本では、メジャー家電、スモール家電、エアコン、AVCという4つの柱がある。だが、海外でその体制が確立できているのは、台湾とマレーシアだけである。この4つの柱で事業展開することで、その地域におけるパナソニックブランドの確立につながる。そして、この4つの柱のすべてに強い商品を持っているのは、世界中を見てもパナソニックだけである。今後、どの地域において、どの柱を、どの順番で立てていくのかということを、明確なロードマップとして考えている」と語る。

そして、「2017年度は、一部残っていた海外家電事業の赤字を無くし、地域、国に適合したプレミアム商品の提案を通じて限界利益を向上させたい。家電事業は、文化に寄り添う事業であり、調理家電ならば食文化、洗濯機ならば衣類の文化に沿ったものになる。そこに対して、パナソニックならではのやり方で商品を提案していく」と述べた。

たとえば、インドでは、衣服についたカレーの染みを落とすことができるカレーコースを搭載した洗濯機や、高音質を実現した液晶テレビなどによるプレミアムマーケティングを展開しており、こうした地域ごとのニーズ特性にあわせた商品展開を進める考えだ。

カレーモード搭載の洗濯機