高品質なら高価格帯でも支持される

SIMロックフリーに注目するのは通信費用を抑えたいユーザーであり、コスト意識は総じて高い。そうしたユーザーは低価格モデルに流れがちになるという、昨年までのファーウェイの読みはある意味理解しやすい。

実際、これまでは2台目需要が中心だった。例えば会社から与えられた端末をメインとして使い、それとは別にプライベート用のサブとしてSIMロックフリー端末を用意するケースが少なくなかったという。

呉氏によると、「2017年に入って、メインとサブのポジションが逆転しているケースが目立っている」のだそうだ。プライベート用に導入した端末をメインにして、会社から与えられたサブ端末は、ビジネス上の必要最小限でしか使わないというわけだ。

これはどういうことだろうか。予測の範疇を出ないが、多くのユーザーが「SIMロックフリー端末は安いので性能も低いに違いない」という先入観から脱しつつあるのかもしれない。

HUAWEI P10 Plusはモノクロレンズを搭載しており、カラーで撮影した写真をモノクロ化するのとは一味違ったモノクロ写真が撮れる

そもそも会社から与えられる端末は、必要最小限の機能しか備わっていなかったり、ともするとフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)だったり……という場合も多い。「安いかどうか」よりも「やりたいことができるかどうか」を重視するユーザーは、ある端末をメインにするかサブにするかに関わらず、これまではキャリアブランドの高機能な端末を選んでいたと考えられる。

SIMロックフリー端末でも高機能モデルであれば「やりたいことができて、なおかつ通信費を抑えられる」と理解すれば、端末の価格が高くても、手に取るには十分な理由と考えられないだろうか。

そして、今どきの若い世代の「やりたいこと」の筆頭クラスといえば、InstagramなどのSNSでフォトジェニックな写真を共有することだ。ライカと共同開発したカメラ機能を搭載し、インカメラでもアーティスティックな写真が撮れるファーウェイのSIMロックフリースマートフォンを、「やりたいことができる端末」と認識したユーザーも多かったのではないか。

ポートレートモードも、ライカのクオリティが反映されている。標準でも被写体深度が浅く、表情をくっきり写せるのが特徴

「日本は品質に対する要求基準が非常に高い市場だ。海外では低価格で性能を抑えたボトムのモデルが広い裾野を持ち、高価格で高性能なモデルはあまり台数が出ない、正三角形の構造になる。極端なのは中国市場で、買い換えサイクルが6~9カ月程度で、みんな安価なモデルばかりを次々買い換える。

ところが日本では、買い換えサイクルが長いこともあって、価格の高いモデルが一番売れたりする。つまり逆三角形の構造。これは高いから売れているのではなく、高品質だから高くても売れている。SIMロックフリーの端末も高品質であれば、高価格帯のゾーンに入っていくはずだ」(呉氏)

第2世代「Leica Dual Camera」Pro版などを備えたP10シリーズでは、ライカの技術者と共にチームメンバーを構成し、いかにライカの技術をファーウェイの端末で実現するか研究したという。ソフトウェアやアルゴリズムもライカと共同で開発し、特にポートレートモードではライカのこだわりが遺憾なく発揮されている。こうした高品質なモデルであれば、高価格帯でも支持されるというのが、呉氏の読みだ。

プロ向けの設定を利用した例。三脚を使って、シャッター速度を下げることで、固定された背景の中で動く人物だけぶれさせて味のある風景写真を作り出している