差別化の手法その2:フルMVNO化

2つめは、現在よりもMNOからの独立性を高めることだ。具体的にはHLR/HSSを自前で持ち、独自のSIMを発行できるようにする「フルMVNO化」だ。一昨年あたりにはMVNOからの要望としてもしばしば出てくる案件だったが、総務省のワーキンググループからの提言で規制が緩和されて実現が可能になった今、逆にほとんど話題に取り上げられることがなくなってしまった。

HLR(Home Location Register)とHSS(Home Subscriber Server)を自前で持てるようになると、基地局にアクセスするユーザーを自分たちで管理できるようになる。

フルMVNOになることで独自のSIMカードの発行が可能になる

具体的には、現在はMNOから購入して再販する形式になっているSIMカードを、自分たちで自由に発行できるようになるのだ。SIMカードを自由に発行できるようになれば、たとえば特殊な機能を備えたSIMカードを作ったり、1枚のカードに複数のキャリアの設定を書き込んだSIMカード(マルチプロファイルSIMカード)、ランニングコストを抑えたいユーザーに人気があるプリペイドSIMカードも発行できる。

ただし、フルMVNO化に真剣に取り組んでいるMVNOは少ない。IIJと日本通信がそれぞれ実現しようとしているが、その他のMVNOにとってはHLR/HSSに対する設備投資が大きすぎるため、現実的な選択肢になり得ないようだ。

その代わり、上記2社については「MVNOに回線/サービスを卸すMVNO」という立場の「MVNE」として展開する余地が広がる。その他のMVNOにとっては、キャリアに頼らず展開する手段が増えるのは歓迎すべきだろう。