EPYC - 詳細は6月20日の正式発表までおあずけ

「どこからEPYCという名前が出てきたのか」という質問に対するTaylor氏の答えは「元々のアイディアはEPOCHだ。Epoch-makingのEPOCHだ。我々の製品はまさしくエポックメーキングな製品であることをアピールしたかった」という。

そのうえで「さらにCIPHERという言葉もここに含めたかった。この製品はデータセンター向けに、非常にSecureで安全に利用できる環境を提供する。EPYCのロゴのバックにある丸も、そうした意味をこめたものだ。そして、発音のしやすさとか覚えやすさを考えると4文字単語でないといけない。そこでEPOCHとCIPHERを組み合わせて発音しやすい単語を考えた結果、出てきたのがEPYCだ」とその背景を解説する。

「実のところ、EPYCという単語が出てきたとき、『それじゃItaniumのアーキテクチャ(EPIC:Explicitly Parallel Instruction Computing Architecture)だ』と社内でもずいぶん真剣に揉めたんだが、最終的にこれで決まった」ということだったらしい。ただ「でもEPYCってなんか機械語みたいで格好いいだろ?」というやや中二病的な発言もあったことを併記しておく。

ちなみに最初は"Zen"を入れた、"Ryzen Server"という名前も検討したとか。ただパートナーからこれは却下されたそうだ。

ところでそのEPYC、いまのところ4ダイの製品のみがラインナップされることになるそうだが、コア数はいろいろバリエーションがあることをほのめかしていた。ただ6月20日の発表が公式にアナウンスされていることもあり、「細かい話は(公式発表の6月20日まで)もうちょっと待て」という返事であった。

ちなみにEPYCでどれだけマーケットシェアを取りたいかという質問を投げかけたところPrior氏は「それは答えられない」と逃げ腰だったが、Taylor氏は「現状のシェアを考えると、もしDouble Digit(2桁)のシェアを取れたら大成功だろう」と言っていた。実際最初はそんなところだろうし、もしそれが実現したらかなり大きなインパクトがありそうだ。

K12 - 64bit ARMベースはどうなった?

Zenコア製品の華々しいアピールの影に隠れているのが「K12」というかARMベースの製品ロードマップ全般である。2014年1月にSeatleことOpteron A1100のアナウンスを行い同2014年7月には開発キットの提供を開始2016年1月には正式に製品発表も行ったが、その後が全く続いていない。

2014年に発表されたProject Skybridgeは、その後「顧客からのニーズが無かった」という理由で2015年5月にキャンセルされている。ただ2014年のロードマップでは、これの後継としてZenとK12を同時に開発していると示していた。本来であればK12もZenと同じく、2017年中に市場投入されるはずであった

ということで、これに関してはストレートに「ところでK12はどうなっているのか?」と聞いてみた。これに対してTaylor氏曰く「確かに我々はアーキテクチャライセンスを保有しており、HPCマーケットに向けてARMを利用する計画をもっている。ただ、現在のデータセンターマーケットはx86アーキテクチャがいまだ支配的であり、EPYCでこのマーケットのシェアを獲得しようとしている。(CEOの)Lisaも、AMDが(EPYCで)HPCマーケットを獲りたいと考えているので、我々はx86でここにチャレンジするつもりだ」という返事だった。

そこで「ではK12はホールド状態なのか、水面下では進行しているのか、それとも中断(Suspended)したのか?」と念押ししたところ「公式なコメントを言える立場ではない」と断ったうえで「我々はRyzenやEPYC、これに続くZen2やZen3に全精力を傾けている」という答えであった。

現実問題としてどうか? というと、すでにK12のTape outは2015年の第3四半期内に済ん でいると見られる。2015年第3四半期のEarning Callにおける質疑応答でCEOのLisa Su氏がJPMorganのHarlan Sur氏の質問に答える形で

"Relative to process technology, we have taped out multiple products to multiple fabs in FinFET and we believe that they're also on track in terms of overall ramp. So we continue to focus on both of those aspects, both the architecture and the process technology, but so far, so good."(「プロセス技術に関して、我々はFinFETを使う複数のFabで複数の製品のテープアウトを完了しており、全体として立ち上がりは計画通りである。我々はアーキテクチャとプロセス技術の両面で引き続きフォーカスし続けており、いまのところ順調である」)

と答えている。明確にK12とは述べていないのだが、一応この段階でK12のTape outが済んだことを表明したと見られている。ZenとK12はフロントエンドのデコーダ部が異なる(x86 vs ARMv8a)だけで、後はほぼ同じ構成と思われるから、両方同時にTape outしても不思議ではない。

したがって、少なくとも1st Siliconは存在するだろうとは思うのだが、その先(動作検証とか互換性テスト、実際のプラットフォームの開発、etc...)の人員がRyzen/EPYCに集中してしまい、ほとんど進展が無いままホールドされているというあたりではないかと思う。

とはいえ、こんなスライドを公開している以上、何もなしというわけにもいかないだろうから、何かしら動きはあると思うが、どういう形を落としどころにするかはちょっと判断つきかねるところだ。

Process - RyzenとVegaではUpdateが行われる

5月16日のFinancial Analyst Dayに併せて更新されたロードマップ(Desktop CPUGPUServer CPU)によれば、RyzenとVegaに関しては、14nmの製品とは別に、14nm+の製品があることが明らかにされている。

この14nm+について、「これはProcess Enhancementなのか、Architectual Enhancementなのか、それとも両方なのか」と尋ねた所、Prior氏は明確に「Both(両方)」と述べた。「いまのRyzenは最初のZenコアなので、もちろんいろいろ改良する余地がある。なので、Archtectureの改良(Enhancement)もある。それとは別にProcessも改良される」とのことだ。

実はCOMPUTEX開催中の5月31日に、Globalfoundriesが都内で記者説明会を開いており、ここで「現在同社は、より幅広い顧客ニーズへの対応を図るために、さらなるパフォーマンスの向上に向けた改良(おそらくこれが14nm LPP+といった名称で提供されるものとなると思われる)を進めている」という説明があった。

実は個別質問の中では、14nm世代ではトータル2回の性能アップが想定されているという話もあったそうで、強いて型番をつけるとすれば14LPP+と14LPP++というあたりになる。

タイミングを考えると、Zenで使われるのは14LPP+になりそうだが、Zen世代でも1回、Skylake→KabyLakeの時のように、基本構造は変わらないにしても、多少動作周波数が上がりやすく、かつ消費電力が若干落ちるといった効果は期待できるかもしれない。

話を戻すと、RyzenとVegaにはUpdateがあることになるが、EPYCに関してはこれが予定されていない。この理由について「Serverの場合、製品のライフサイクルが長い。我々は14nmに続いて14nm+の製品をリリースし、次いで7nmの製品を出すことになるが、この7nmの製品はよりサーバーに適したものになる予定だ」という話だった。