AMDは5月16日(米国時間)、米カリフォルニア州SunnyvaleのAMD本社において投資家向け会議「2017 Financial Analyst Day」を開催し、同社の最新ロードマップや製品戦略を披露した。

同社を率いるリサ・スー社長兼CEOは、現在もっとも注力するデータセンター市場向けに開発中のCPUである"Naples”(ネープルス:開発コード名)を「EPYC」のブランド名で投入すると表明。大きな成功を収めたOpteronブランドとは別れを告げ、新たなブランド名でデータセンター市場へと切り込んでいく。

Napelsの開発コードネームで開発されてきたデータセンター向けCPUのブランドに「EPYC」を採用すると発表

EPYCの実物も披露

また、AMDは開発コードネーム"Raven Ridge"(レーベン・リッジ)で知られるノートPC向けの「RYZEN Mobile」を2017年後半に投入することを明らかにした。構成は最大4コア8スレッドで内蔵グラフィックスコアにVegaアーキテクチャベースのGPUを搭載するという。

AMDのクライアント向けCPU出荷計画。2017年後半にRYZEN Mobileと企業向けデスクトップCPUのRyzen Proを投入、2018年第1四半期に企業向けモバイルAPUのMobile RYZEN Proの投入を計画

RYZEN Mobileの特徴。GPUにはVegaコアを採用

企業向けCPU/APUラインも発表

RYZEN Proの性能比較

デスクトップにも16コア/32スレッドがくる

さらに、同社でCPUビジネスを統括するジム・アンダーソン氏(Senior Vice President and General Manager, Computing and Graphics)は、現行のRYZENデスクトップシリーズのさらに上位モデルに位置付けられる、16コア/32スレッドの「RYZEN Threadripper」(ライゼン・スレッドリッパー)を、まったく新しいプラットフォームとともに、デスクトップ市場に向けて2017年夏にも投入することを予告した。

新しいハイエンドデスクトッププラットフォームを予告

デスクトップ向けハイエンド製品として、16コア/32スレッドの「RYZEN Threadripper」を2017夏投入することを予告

一方、グラフィックスでは、2017年6月に市場投入が予告されている"Vega"の特定市場向け早期モデルとなる「Radeon Vega Frontier Edition」を、6月末よりデータ・サイエンティスト、イマーション・エンジニア、プロダクト・デザイナー向けに供給することを発表した。

Radeon Vega Frontier Editionを6月末に投入することを予告。ただし、対象はデータ・サイエンティストなどに限られる

Radeon Vega Frontier Editionの性能指標も公開

ディープラーニングの性能指標をBaidu ResearchのDeepBenchにおいて、Tesla P100と比較し、約33%高速だとアピール。Radeon Fury Xとの比較も明らかにされた。これによれば、Radeon Vegaの32bit浮動小数点演算性能は最大13TFLOPS、16bit浮動小数点演算性能は最大25TFLOPS、そして、メモリサイズは16GBとなる。

Baidu Researchの深層学習性能ベンチマークのDeepBenchで、現在主力ハードウェアのパフォーマンスデータを披露。現状ではAMDの立ち位置はない

Vegaの深層学習性能をライブデモで披露。比較対象はNVIDIAのTesla P100

Vegaの深層学習性能はTesla P100を上回るとアピール

EPYCで2CPUサーバーをシングルCPUに置き換える

AMDでデータセンタービジネスやエンベデッドビジネスを統括するフォレスト・ノルド氏(Senior Vice President and General Manager, Enterprise, Embedded and Semi-custom)は、EPYCの詳細について説明。EPYCは8コアCPUダイを4つパッケージに搭載し、それぞれをInfinity Fabricで接続することで、スケーラブルなパフォーマンスアップを実現しているという。ヒートスプレッダを取り外したチップも披露した。

EPYCは8コアCPUダイを4つ搭載し、それらをInfinity Fabricで接続。CPU製造にかかる歩留まりを向上させるとともに価格面でもアドバンテージを実現する

ヒートスプレッダを取り外したチップも披露

EPYCの2ソケットプラットフォームは、CPUコアの多さだけでなく、競合より優れた接続性とメモリ容量を実現

また、EPYCの仮想環境における性能比較デモを実施し、8つのVMを走らせるのに必要とする時間を比較し、Intelのフラグシッププラットフォームより優れた仮想環境プラットフォーム性能だとアピール。

同じ2ソケット環境で、Intel Xeon E5-2699A V4とEPYCの仮想環境における性能比較デモを実施。8つのVMを走らせるのに必要とする時間を比較してみせた

Intelのフラグシッププラットフォームより優れた仮想環境プラットフォーム性能だとアピール

さらに、現在のx86サーバー市場では、Intel Xeon E5-2650以下のCPUが50%以上を占めているとが、EPYCのシングルCPU構成は、Intel Xeon E5-2650 V4の2CPU構成よりも性能が優れていると自信をみせる。

現在のx86サーバー市場では、Intel Xeon E5-2650以下のCPUが50%以上を占めている

Intel Xeon E5-2650 V4の2CPU構成と、EPYCのシングルCPUでもベンチマーク比較

EPYCのシングルCPUのほうが、Intel Xeon E5-2650 V4の2CPU構成よりも性能が優れているとアピール

フォレスト氏はEPYCの投入により、現在主流の2CPUサーバーをシングルCPUに置き換えることが可能となり、消費電力やシステム構築にかかる低減にも役立つとした。また、EPYCプラットフォームは、より多くのメモリやストレージをCPUに直結し、GPUともダイレクトに接続できることで、深層学習向けプラットフォームとして高いスループットを発揮できるいう。これにより、AMDが遅れをとっている深層学習分野においても、EPYC+RADEON INSTINCTの組み合わせにより、競争力を発揮できるとみている。

EPYCの登場により、プラットフォームの小型化や省電力化が可能になるとアピール

EPYCの投入により、現在主流の2CPUサーバーをシングルCPUに置き換えることが可能となる

EPYCプラットフォームは、深層学習向けプラットフォームとしても、よりすぐれたスループットを発揮できる

なお、AMDは2020年までのCPU、GPUロードマップを公開し、次世代CPUやGPUでは7nmプロセスを採用する計画なども明らかにした。

AMDのCPUロードマップ

AMDのGPUロードマップ

AMDのデータセンター向けCPUロードマップ