従来のコールセンターであれば、オペレーターの前に紙の資料が大量に並んでおり、その中から該当する資料を探し出さねばならなかったため、回答までにはかなりの時間がかかった。また、回答前の時間やクオリティは、スタッフにより大きなばらつきが出ることになる。

従来のコールセンターのイメージ。紙の資料が山と積まれており、それを開いて探しながらのオペレーションとなる。平均して回答までに数分はかかっていた

ところがWatsonにサポート事例を学習させておけば、音声認識で顧客とサポート要員の会話を認識し、その結果必要だと推測される資料を瞬時に提示してくれる。最初のうちは間違った資料を提示することもあるだろうが、画面上で次々と候補を確認していく手間は手で資料を探し出すよりは短時間で済むし、学習が進めばこういったエラーもどんどん少なくなり、さらに効率が上がるわけだ。実際、同行では問い合わせ1件あたりのサポートコストが60円削減されたほか、新人スタッフの離職率も48%減少に成功している。

電話の内容が即座に認識され、テキスト化される。テキスト化されることで聞き逃しがなくなり、あとで参照する際のデータとしても使いやすい

会話内容から即座にWatsonが大量のデータから該当しそうな項目を選択して提示する。間違っていたとしても候補を複数用意しておけばヒット率は高いし、紙の資料を引くよりはるかに早い

終了後にフィードバックを返すことでさらに精度が高まっていくのは学習能力を持つ人工知能ならではだ

「人工知能が人間の仕事を奪う」という論評も多いが、コグニティブコンピューティングの世界では、人工知能が人間の仕事をサポートすることで、業務効率の工場や業務時間の短縮、顧客満足度の向上に繋げることができる。また、コールセンターは人の入れ替わりが多い職場だが、その一因として新人が環境に対応できず早期退職するという事情がある。三井住友銀行の場合、Watsonを用いることで、早期離職率も低減に成功しているという。

三井住友銀行のコールセンターでは、問い合わせ1件あたりの60円のコスト削減に成功し、サポート離職率は48%も低減したという

そして事例を見てわかるように、ユーザーはキーボードやマウスにすらほとんど触らないでWatsonの機能を活用できている。ユーザーがシステムに慣れる必要もなく、人工知能という疲れ知らずの相棒と共にテキパキと処理をこなしているというのは、実に未来的な光景だ。