日本郵政は2016年度決算で4003億円の減損損失を計上する。2015年に6200億円で買収した豪州の物流企業「トール」の業績が悪化し、同社の損益見通しを見直した結果としての措置だ。日本郵政の連結最終損益は、3200億円の黒字予想が一転して400億円の赤字に転落。果たしてトール買収の何が問題だったのか。
減損計上の背景は
トール(Toll Holdings Limited)の事業内容は、①豪州国内物流事業、②国際フォワーディング事業、③コントラクト事業の3つに区分できる。フォワーディングとは物を運ぶ際にさまざまな手続きなどを一括して請け負うサービスのこと。コントラクト事業とは荷主企業から物流業務の一部あるいは全部の委託を受ける事業で、サードパーティロジスティクス(3PL)とも呼ばれるビジネスだ。日本郵政による買収決定時の資料を見ると、トールはアジアパシフィック地域で高いプレゼンスを持ち、多国籍企業経営の経験も豊富なのだという。
トールの営業損益は、資源価格の下落と中国・豪州経済の減速で悪化した。収益性低下は主に豪州国内物流事業の不振が原因だが、国際フォワーディング事業の損益も赤字だという。
トールは景気拡大期に100件を超すM&Aを行って成長を遂げた企業だが、バックオフィスやオペレーションなどの統合が不十分で、ITシステムや組織が重複するなど、固定費の比率が高いという弱みがあった。豪州が景気減速期に入り、コスト競争力の低さというトールの弱みは顕在化し、高い固定費が同社の利益を圧迫した。
巨額の減損計上に結びついたトールの買収。日本郵政は今後、トールをどうするつもりなのだろうか。