アメリカ航空宇宙局(NASA)は14日、土星の衛星である「Enceladus(エンケラドス)」が、生命の発生に必要な条件を備えている可能性があることを発表した。この新たな発見について、科学雑誌「Science」に論文が掲載された。

土星の衛星・エンケラドスから吹き上がる水蒸気の柱(プルーム)の中を飛行する無人探査機・カッシーニのイメージ画像 (c)NASA/JPL-Caltech

エンケラドスは、厚い氷に覆われた土星の衛星で、氷の層の下には海が広がっていると考えられている。今回、無人探査機「Cassini(カッシーニ)」の観測データによって、その表面の割れ目から吹き出している水蒸気の柱(プルーム)の中に、水素が存在するということが明らかになった。この噴出は、海底の熱水活動によるものだと推測されている。

科学者たちが考察した水素が噴出する仕組みを示した図 (c)NASA/JPL-Caltech

噴出されている水蒸気の柱の成分としては、約98%が水、約1%が水素、これ以外にわずかな二酸化炭素、メタン、アンモニアを含む他の分子の混合物が含まれる。水素が存在するということは、微生物が水中の二酸化炭素と水素を組み合わせてエネルギーを得て、副産物としてメタンを生成する一連の化学反応が発生している可能性がある。つまり、今回の発見は、この星に微生物が発生し、生命を維持している可能性を示唆している。この化学反応は、地球における生命の起源にも関わっていると考えられているものだ。

論文の主執筆者のひとりであるハンター・ウェイト(Hunter Waite)氏は、「生命そのものを発見することはできませんでしたが、エンケラドスには生命の"食べ物"となるものが存在すると分かりました」とコメントしている。