監査委員会の内部調査の結果……財務諸表への影響はシロ
これは、2月14日の最初の決算発表延期の際の理由となった、ウェスチングハウスによるCB&Iストーン・アンド・ウェブスターの買収に伴う取得価格の配分手続きの過程において、内部統制の不備を示唆する内部通報があったことに対する調査だ。一部経営者により、限定された範囲および期間において、不適切なプレッシャーが存在するとの指摘があり、東芝では、その存否や影響範囲について調査を行ってきた。
3月14日の2度目の発表延期の際にも、これに関して追加調査が必要であることを延期理由にあげている。
だが、今回の会見では、先にも触れたように、「一連の調査は完了している」(東芝の佐藤委員長)という点がこれまでとは異なる。
同社では、「3カ月に渡る調査では、60万通のメールを調査し、20人以上に渡るインタビューを実施してきた。弁護士などの独立した第三者を起用して、真摯に実施してきた」(同)と調査に自信をみせる。
佐藤委員長は調査結果として、「損失認識時期が問題となる証拠は発見されていない。調査の過程で、一部経営者について、限定された範囲、期間において、不適切なプレッシャーと見なされる言動が認められたため、この一部経営者については、ウェスチングハウスの経営に関与させないなど、抜本的な措置を講じることを執行側に要請し、改善措置の実施を確認している。不適切なプレッシャーと見なされる言動は認められたものの、当社やよびウェスチングハウスの内部統制は有効に機能しており、財務諸表に影響を与えなかったと判断している。また、監査委員会では、2016年度第3四半期以外の期で、本件損失を認識すべき具体的な証拠は発見できなかったと判断している」とする。
本決算は5月中旬 この時監査はどうなる?
だが、PwCあらた監査法人では、今回の第3四半期報告書だけでなく、第1四半期報告書および第2四半期報告書についても結論を表明しないとしている。さらに遡って調査をする必要性を示唆しているともいえる。
綱川社長は、「監査法人の理解を得るべく最善を尽くしてきたが、このような結果になり遺憾である。第3四半期決算の手続き延長により、年度決算に関する監査手続は時間を要するものと考えているが、5月中旬には決算の内容を公表する予定である」とコメントするものの、「2016年度通期業績に関しても、PwCあらた監査法人による評価が5月中旬までには終わらない可能性がある」と発言。5月中旬に予定している2016年度通期業績発表が予定通り開催できるのかどうかという点でも暗雲が立ちこめている。
会見では、監査法人の変更の可能性について、何度も質問が飛び、東芝の取締役代表執行役専務の平田政善氏が、「PwCあらた監査法人以外を選択するということではない。本決算については、なんとか発表までに評価を終わらせてもらい、監査を正常な形にしたい」としたが、両社の見解が相違したままの状態が続き、それによる不表明が行われる可能性があるのならば、監査法人を変更するという手段が視野に入るのは当然のことだろう。
通期決算の発表が大きなポイント
5月中旬に発表を予定している2016年度通期の業績報告書および決算発表は、東芝にとって重要な意味を持つ。
これが、上場廃止を左右する「勝負俵」にもなるからだ。
会見で東芝の綱川社長は、「東証の有価証券上場規定では、意見不表明となった場合、市場の秩序を維持することが困難だと明らかなときには、直ちに上場廃止になるとしている。そうした事態にならないように最大の努力をしたい」と語る。
もし、通期業績も不表明となり、本決算を予定通りに発表できないようだと、東芝の上場廃止への道筋がより鮮明になってしまうだろう。