米Appleが同社のプロセッサに独自デザインのグラフィックスを採用する計画を進めているという。Aプロセッサで用いられているGPU(グラフィックス描画処理装置)コア「PowerVR」シリーズを開発する英Imagination Technologiesが、計画を理由に同社の知的財産の使用を終了させる通告を受けたことを明らかにした。
iPhoneやiPad、Apple TVなどに採用されているAプロセッサにはARMベースのCPU(中央演算処理装置)コアと、PowerVRアーキテクチャのGPUコアが組み合わせられてきた。2012年の「A6」からAppleはプロセッサの独自設計を加速させており、その効果で近年のAppleデバイスでは効率的に優れた性能を引き出すAプロセッサがライバルの端末に対する強みとなっている。
Imaginationが3日に公開した「Discussions with Apple regarding license agreement」という声明によると、15カ月後から2年後の時期に発売する新製品をターゲットにAppleはImaginationの知的財産の使用を終了させようとしている。「Appleは、同社の製品をコントロールするために(PowerVRとは)別の独立したグラフィックスデザインに取り組んでいると明言しており、それによってAppleのImaginationの技術への依存は弱まる」(Imagination)。
ImaginationはAppleに同社の技術が不要である根拠を求めたが、Appleは提供を拒否したという。Appleが具体的にどのようなGPUコアを使おうとしているのかは不明だが、GPUコアの完全独自設計に乗り出しても不思議ではない。半導体メーカーのようにプロセッサもデザインできる機器メーカーであるのが今日のAppleの特長であり、同じARMベースのプロセッサを搭載するデバイス群の中でAppleデバイスをユニークな存在にしている。
ただし、ImaginationはGPUコアの完全独自設計について、同社の知的所有権を侵害せずに新しいGPUアーキテクチャをデザインするのは非常に困難であると指摘している。現在のライセンスと特許使用合意に関して新たな合意を結ぶ可能性を含めてImaginationはAppleと協議する姿勢を示す一方で、同社の知的所有権や機密情報を侵害するような行為には法的手段に訴える考えを示唆している。
長年Imaginationに投資してきたAppleは、Imaginationの最大の顧客である。過去にはAppleがImagination買収の交渉に乗り出したという噂が何度か報じられている。AppleがPowerVRと決別するという報道によって、4月3日のロンドン市場でImagination株は急落した。