DP-CMX1の基板設計はノイズ対策を考慮し、SoCなどスマートフォンとしての回路がある基板と、DACやアンプなどオーディオ基板を完全に分離。オーディオ部はDACにESS社の「ES9018K2M」、ヘッドホンアンプに同じくESS社の「9601K」を搭載、左右に2基づつシンメトリーに配置するというDP-X1Aの設計に倣った。もちろんバランス駆動・バランス出力のためのデザインであり、製品のアイデンティティといえる。
2.5mmバランス端子使用時にBTL駆動とACG(アクティブコントロールグラウンド)駆動を選択できるのは、DP-X1Aと同様。PCMは最大384kHz/24bit、DSDは11.2MHzまで再生できるが、Android OSの制約によりイヤホン出力は最大192kHz/24bitのリニアPCM変換となる点も同じだ。USB DAC(OTG接続)を用意するとDSDネイティブ再生が可能になることもあわせれば、DP-X1Aをセルラー通信対応させスマートフォン化した製品であることは確かだ。
つまり、この製品最大のポイントは「セルラー通信を行うようになり電磁ノイズの影響を受けやすくなった中でDP-X1Aの音質を維持・向上できているかどうか」にある。発表会では、セルラー回線やWi-Fiのオンオフを切り替えてもSN比にほとんど差がないと説明していたが、実際のところどうなのか。
試聴には、Shureのダイナミック型イヤホン「SE215m+ Special Edition」を使用した。MMCXコネクタを採用しているため、標準装備でリモコン付きのアンバランス/3.5mm端子ケーブルだけでなく、バランス/2.5mm端子ケーブルに交換できるからだ。なお、リケーブルにはPC-Triple C導線を採用したSAECコマース「SHC-B120FS」を利用した。
全体的な音の傾向は、スピード感があり、解像感の高さと音場感の豊かさが際立つ。SE215というイヤホンのキャラクターもあり、低域の厚みとキレを感じさせつつも緻密な階調の高域を実感できる。オーディオ再生用の基板デザインや部品構成がほぼ同じ(基板サイズ自体は小型化されている)ことから、音の印象はDP-X1Aとよく似ているが、スマートフォン化したことで電磁ノイズが増えたことを考慮すると、この水準を維持できたことは快挙だ。
聞けば、DP-CMX1にはオンキヨーの高周波設計技術とオーディオ設計技術を融合したシールド技術が利用されているという。特許出願中ということで詳細は語られなかったが、効果はありそうだ。というのも、DP-CMX1には「スタンドアローンモード」という通信機能や画面表示を完全にオフにするモードがあるのだが、そのオンオフを切り替えても顕著な差が感じられなかったからだ(SN感はやや改善されるため存在意義はある)。