オンキヨー&パイオニアイノベーションズは26日、SIMフリーのハイレゾスマートフォン「GRANBEAT DP-CMX1」を発表した。スマートフォンとしては世界初となるフルバランス駆動回路およびバランス出力端子を搭載、高音質再生を追求している。

GRANBEAT DP-CMX1

発表会で登壇した代表取締役社長の宮城謙二氏は、2015年に発売したAndroidベースのハイレゾプレーヤー1号機「DP-X1」を手に、「非常に好評だったが、社内では"SIMを入れるべき"との意見が多く出た」とスマートフォンの製品化に至る経緯を説明。ハイレゾ配信サイト「e-onkyo music」が順調に配信楽曲数を伸ばしていることに触れたうえで、「ポータブルプレーヤーとヘッドホンの市場が大きく伸びているが、こういったデバイスは利便性を追求するあまり音質と利便性がトレードオフの関係になってしまった」とポータブルオーディオにおける問題点を指摘、それがGRANBEATの開発につながったと明かした。

オンキヨー&パイオニアイノベーションズ 代表取締役社長 宮城謙二氏

GRANBEATという名称については、「BEATは心臓の鼓動、ドラムの鼓動、音楽の鼓動。GRANは"GRAND"で、BEATで大きく心を突き動かそう、という意味を込めた造語」という。ハイレゾのみならずストリーミングサービスの音質も格段に向上すると説明したうえで、「スマートフォンの利便性を保ちつつ、音楽プレイヤーの最高傑作を目指した」と開発コンセプトを紹介した。

オンキヨー&パイオニアイノベーションズ ネットワークサービス事業本部 本部長 土田秀章氏

続くネットワークサービス事業本部 本部長の土田秀章氏は、「オンキヨーは70年以上の歴史を持つHi-Fiオーディオブランド。お客さまになにが提供できるのかという原点に立ち返り、ミュージック・ラバーに"スマートフォンで最高の音質"、一番いい音のスマートフォンを提供したい」と述べたうえで、DP-CMX1の設計コンセプトと機能の詳細を説明した。

製品コンセプトについては、「いちばん音のいいスマートフォンを目指すが、スマートフォンとしての機能もおろそかにしない。DP-X1の質と機能をそのままスマートフォンにしたい、SIMを搭載したい、そこからつくりこんだ」と説明。アルミブロックから削り出したきょう体など、従来のスマートフォンと一線を画す仕様も、音にこだわった結果の個性として主張したいという。

基本設計は、スマートフォンという強い電波を発する機器において、いかにノイズの混入を排除するかという観点から出発したという。「検討の結果、DP-X1と同じきょう体内のセパレーション構造、Android OSベースの動作を担うプレイヤー部とアンプ/DAC部を分離することに決定した」とのこと。

基本構造はDP-X1と共通だが、スマートフォンとしてノイズ対策を徹底したという

ただし、DP-X1と完全に同一の設計ではなく、アンプ/DAC部はDP-X1より小さくしてノイズの影響を抑え、通信により生じるノイズを遮断するシールド技術(特許出願中)を採用している。その効果により、3G/LTE通信オフのときのS/N比が実測値121.644dBであることに対し、オンのときでも121.315dBと通信中でもオーディオパフォーマンスを維持できているという。

DAC/アンプ部は、DACにESS社の「ES9018K2M」、ヘッドホンアンプに「9601K」各2基をシンメトリーに配置するフルバランス回路とした。ヘッドホン端子には、3.5mm/4極アンバランス端子と、スマートフォンでは世界初となる2.5mm/4極バランス端子を搭載。バランス接続はDP-X1と同様、一般的な「BTL駆動」にくわえ「アクティブコントロールGND(ACG)駆動」の2つのモードを選択できる。再生対応フォーマットはDSD(最大11.2MHz、PCM変換)、PCM(MQA/WAV/FLAC/ALAC/AIFF、最大384kHz/24bit)、圧縮音源(MP3/AAC/Ogg-Vorbis)をサポートする。DSDネイティブ再生には、USB-OTGで接続したUSB DACが必要だ。

3.5mm/4極アンバランス端子にくわえ、スマートフォンとしては世界初となる2.5mm/4極バランス端子を搭載した

セルラー回線以外のワイヤレス関連機能については、IEEE 802.11a/b/g/n/ac(無線LAN)とBluetooth 4.1に対応。Bluetoothオーディオのコーデックは、SBCとaptXのほか、48kHz/24bitの伝送を実現する「aptX HD」もサポートする。

スマートフォンとしてのスペックも充実。SoCにはQualcommの「Snapdragon MSM8956」(6コア、1.8G+1.4G)、3GB RAMを搭載する。SIMスロットは2基でデュアルSIM/デュアルスタンバイ(DSDS)をサポート、装着した2枚のSIMで同時待ち受けが可能だ。発表時点で提携するMVNOは楽天モバイルのみだが、「他社との話し合いも進めている」(土田氏)とのこと。

6コアの「Snapdragon MSM8956」を搭載するなど、スマートフォンとしても強力なスペックを持つ

本体上部に3.5mm/4極アンバランス端子と2.5mm/4極バランス端子が並ぶ

左側面にボリュームダイヤルを備える

MVNO事業者としてGRANBEATを取り扱う楽天モバイルからは、楽天モバイル事業 チーフプロダクトオフィサーの黒住吉郎氏が登壇。GRANBEATを扱う動機については、「楽天モバイルの多彩なラインナップが顧客からの支持を得ており、昨年からはスマートデバイスやドローンなども手掛けている。GRANBEATもこの文脈の延長線上にあるのではないか」と話した。

オンキヨー&パイオニアイノベーションズとの交流は、2016年のCESで開発メンバーに「SIMを入れたい」と持ちかけられたことがきっかけと明かしたうえで、「音楽に妥協してはいけない、そうでないとこの製品には意味がないし売れないと主張してきた」(黒住氏)と、音質面でのアプローチに期待していたことを説明した。

Android OSの仕様上DSD再生はPCM変換となるが、USB DACを用意するとネイティブ再生が可能になる

SIMスロットは2基、デュアルSIM/デュアルスタンバイ(DSDS)をサポートする