各種指標が改善に向かうスプリント

では、スプリント事業の現状はどうか。孫氏は様々な指標をあげつつ、改善に向かっていることを強調する。ポストペイド携帯電話の契約数が順調に推移していること、解約率が低水準を維持できていること、売上もドルベースで増収となり、コスト削減も年間3兆数千億円かかっていたものが、2兆数千億円と約4年間で1兆円下がったという。結果として、2016年度第3四半期までは、調整後キャッシュフローが5億ドルの黒字に転換した。

設備投資額が他社より圧倒的に少ないながらもネットワークの信頼性は大幅に向上したと説明

ポストペイド純増数が安定的に推移

2016年度第1四半期は前年同期比で16億ドルの削減

調整後フリーキャッシュフローも黒字に

利益面で何が貢献しているのかを見えると、コストダウンの寄与が大きく、まだ先行きの不安も残りそうだが、孫氏の発言からは、スプリント事業が軌道に乗り始めたことが伺える。

かつて、業績改善の糸口が見え始めた2015年11月に、「毎晩ネットワーク会議をやっている。待ち遠しくて仕方がない」などと発言していたが、それが今回の説明会では、毎週と表現が変わっており、今では同社への関与の回数が大幅に減っている。

今回の説明会では「スプリントがソフトバンクの足を引っ張っている。スプリントで悩みまくっているというイメージを、そろそろみなさんのほうでも認識を改めていただきたい。そういう自信が出てきたと。だからARMの買収決断ができた。(中略)次の攻めとして、10兆円規模の世界最大の投資ファンドをつくる決断ができた」などコメントしており、最大の関心事が別のところに移っていることは明らかだ。

買収後、後悔に明け暮れた日々から一転。孫氏の中ではスプリント事業の建て直しは終息間際になっていると見てよさそうだ。