NTTと東レ、藤田学園藤田保健衛生大学、NTTドコモの4者は2月7日、着用により心拍などの生体情報(心拍データ)を取得できるウェアラブル生体センサ「hitoe」(ヒトエ)を利用した「リハビリ患者モニタリングシステム」の有効性を検証する共同実験を6月30日までの予定で開始した。

hitoeウェアのイメージ

同実験は、藤田保健衛生大学リハビリテーション部門が藤田保健衛生大学病院において、患者の心拍・様態情報(活動量・位置情報)を24時間モニタリングし、リハビリテーション分野での定量的診療データとしてのhitoeの有効性と可能性を探る。hitoeのリハビリテーション分野における有効性の確認・検証の後、東レ・NTT・ドコモの3社は、hitoeのサービス化を目指す。具体的な実験内容は、健常者での予備検討、センターでのリハビリ向上効果の検討、病棟生活などを含めた24時間モニタリングによるリハビリ影響度の評価の3点となる。

健常者での予備検討では、健常者にリハビリ用hitoeウェアを着た状態で運動させ、心拍数データを取得すると同時に、呼気ガス分析やSpO2(動脈血中のヘモグロビンが酸素とどのくらい結合しているかの数値)測定を行うほか、歩行中には歩行速度や距離も計測する。これらの結果から、hitoeから得たデータが運動負荷を反映できるかどうかを確認する。

リハビリ向上効果の検討では、藤田保健衛生大学病院リハビリテーションセンターでリハビリを行なう外来患者及び入院患者がリハビリ用hitoeウェアを着用し、リハビリ中の心拍データおよび、運動中か安静時かや立位か臥位かなどを示す活動データを取得。取得したデータはリアルタイムで表示するため、適切な運動負荷の練習が行なわれているかの確認に役立つと考えられるという。

また、専用ビューワーを使い、1回のリハビリ中の心拍数・活動の変化や、これまでのリハビリでの心拍数・活動の経過を確認できるため、医師が効果の高いリハビリの立案に役立つとしている。hitoeの利用がリハビリ・プログラムの立案・実行および患者の回復にどのような影響を与えるのかを検討する。

リハビリ影響度の評価では、リハビリ科の入院患者にhitoeウェアを着た状態で24時間、通常の入院生活を行い、患者の活動の変化は看護師が持つ端末にリアルタイムで確認できるため、転倒リスクのある患者の活動に早期に気付くことができ、臥床傾向の患者に運動を促すことも可能だと考えられるとしている。hitoeの利用が、患者の危険行動の早期確認や、病棟での活動促進に繋がるかを評価。実験期間は前述の通り6月30日までの予定だが、おおよそ3年以内での実用化を目指しており、実験継続の可能性もあるという。

リハビリ患者モニタリングシステムのシステム構成

実施場所は、最初に藤田保健衛生大学病院A棟 リハビリテーションセンター、2018年からは同大学病院B棟回復期リハビリテーション病棟への導入を検討しており、対象患者の人数は健常者30人、外来通院中患者30人、入院中患者30人を予定。

同実験における各社の役割として藤田保健衛生大学は、リハビリテーション医療現場でのhitoeの利用検討、リハビリ用hitoeウェアを利用する臨床研究と発表、RSH(ロボティック・スマート・ホーム)でのhitoeの利用検討、東レはリハビリ用hitoeウェアの検討、NTTはリハビリ用hitoeウェアに対応する心拍安定取得・行動推定が可能なデータ収集・表示システムの検討、ドコモは同システムの事業化の検討をそれぞれ行う。

なお、今後は藤田保健衛生大学がUR豊明団地(愛知県豊明市)に検証用住戸を整備し、介護ロボットをはじめとした支援機器の導入のための支援機器の有用性、居住空間の在り方などを検証する施設「RSH(ロボティックスマートホーム)」にhitoeを導入(6月の稼働予定)。これにより、自宅での活動の促進、見守りができるかの確認、病院で行う24時間モニタリングをシームレスで自宅でも可能とする検証に取り組む。