サブブランドにも影響を及ぼす総務省
とはいえ市場環境は刻々と変化しており、現在の2ブランド戦略がいつまでも通用するとは限らない。特に今後、キャリアの2ブランド戦略に大きく影響してくると考えられるのが、近年キャリアに厳しい姿勢を取り続けている総務省だ。
例えばソフトバンクの場合、去る2月1日に日本通信がソフトバンクと相互接続協定書を締結したことを発表。同社がソフトバンクのMVNOとして、3月22日より安価な通信サービスを提供することを明らかにしているのだが、これには日本通信とソフトバンクの交渉が不調に終わり、日本通信側が総務省に申し立てをした結果、日本通信に有利な判断がなされたことで、結果的に実現したものである。
ソフトバンクはワイモバイルの存在があることもあり、これまでMVNOへの回線貸し出しには消極的な立場をとっていた。だが今回の出来事を機としてソフトバンク回線を用いたMVNOが増えると見られていることから、NTTドコモのように低価格ユーザーに向けたサービスを、自社で制御しづらくなる可能性が高まると見られる。
またKDDIの場合、かねてよりUQ mobileのサービスと、mineo(ケイ・オプティコム)の「Aプラン」やIIJmio(インターネット・イニシアティブ)の「タイプA」など、傘下以外の企業が提供するKDDIの回線を用いたサービスとでは、技術的な仕組みの面でいくつかの違いが見られ、UQ mobileが有利な状況となっていることが度々指摘されている。こうした点が総務省の目に留まり、改善要求などがなされた場合は、KDDI傘下ならではの優位性が揺らぐ可能性もあるだろう。
総務省はMVNOの競争力拡大に向け、キャリアの施策だけでなく、キャリアのサブブランドに対しても厳しい目を光らせつつある。サブブランドを抱える両キャリアは、今後2ブランド戦略を一層強化する姿勢を見せているが、競争力強化のため一体運営を進めるほど、総務省の厳しい判断を受けることになるかもしれない。