また、「問題は現場で起こっている。その答えも現場にある。会議室では解決できない。これまでと同じように、自ら現場で、現物を確認して、現実を認識して、問題の本質を捉えていく。これからも現場を大切にする会社でありたい」などと述べた。
3つの柱のひとつである「プリンティング事業の再構築」では、「収益拡大を狙う攻めの戦略を展開したい」とし、「マーケットシェアを重視した、モノづくりを自前でやるといった、これまでの常識や前提をとらわれず、規模重視から付加価値重視への戦略上の大転換を行う。収益力強化という観点からゼロベースで考えたい。また、プリンティング技術が応用できる範囲を増やしたい。プリンティング技術は、プリンタ、複合機に留まらず、産業領域や3Dプリンティング領域にも応用されている。印刷材料は、トナーやインクだけでなく、金属や人の細胞にまで可能性は広がっていくことになる。Print to Everything、プリンティング・ルネッサンスを打ち出し、オフィス以外、紙以外にもプリンティング領域を拡大したい」とした。
社長就任会見で、こうした新たなメッセージを明確に打ち出す新社長もあまりの例がないといえよう。
さらに、「リコーには、全世界130万社で、400万台が利用されている。こうした顧客基盤を生かして、従来にない高付加価値の製品を投入したい。リコーらしいデバイスで、キャプチャーした情報で予測し、これを有用な情報として提供したい。それにより、より速く、的確な意思決定を行い、経営スピードをあげる創造インフラをつくりたいと考えている。リコーが持つプリンティング技術と屈指の顧客基盤を生かしたい」とした。
企業の宝は社員のモチベーション
「生産性改革、働き方改革」では、十分な利益確保に向けて、生産性改革、働き方改革を社員全体でやる姿勢を強調。「オペレーションスルーの観点から、ゼロベースでの生産性改革とともに、コスト構造の見直しを行っていく。リコー自らが働き方改革のリーダー企業として、これを実践し、製品にも反映していく」と述べた。
また、「スピード経営と未来人財の育成」では、「顧客の課題は刻々と変わっている。これまでの上意下達の体制ではなく、意思決定機能を顧客に近いところに持って行くことが大切である。効率的に動ける事業単位に分けて、意思決定を迅速化し、グローバル事業責任者には、経営者と同じ資質を求め、地域ごとの事業推進者には未来の経営幹部候補を登用する。経営陣には、性別、国籍は問わずに幹部に登用したい」と述べた。
さらに、「企業の宝は社員のモチベーションである。これは三愛精神である。企業の成長はシステムではなく、社員の高い志によって実現する。リコーグループの社員一人一人が学びながら、自己変革を通じて、会社を変えてくれると考えている。そして、その場を提供するのが経営者の重要な役割である。先頭に立って、リコーの目指す方向を示し、輝ける会社にすることを約束したい」とした。
一方で、山下次期社長は、「リコーは、組織が大きくなり、意思決定のスピードが遅くなっていたという反省がある。私自身、社長就任後、全社員となんらかの方法を使ってコミュニケーションを取りたい」と述べた。