MMD研究所は23日、メディア向けイベント「MVNO勉強会」を開催。格安SIMサービスを展開するMVNO事業者4社の代表者が登壇して、市場の総括や今後の課題などを語った。また、MMD研究所の担当者は2016年の格安SIM市場をデータの上から総括した。
大手の学割キャンペーン、どう対抗する?
スマートフォンの契約者を抱え込むべく、大手通信事業者は今春も”学割キャンペーン”を大々的に展開する。これについて、MVNO事業者はどう思っているのだろうか。
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NTTコミュニケーションズの中山賀王氏は「なかなかしびれますね。どう対抗していくか。MVNOならではの特色のあるサービスを出していくことがひとつの答えになるのでは」と回答。
また、インターネットイニシアティブ(IIJ)の佐々木太志氏は「大手キャリアさんは、学割の対象になるような若年層の方たちへの訴求力が強いと考えている。我々としては、キャリアさんが強いところでキャリアさんと正面から対決するつもりはない。そこは避ける。学生の方はいずれ社会人になるので、そこを手堅く狙っていくということで全然問題はないと思っている」と答えた。
ビッグローブの中野雅昭氏は「ビッグローブにはISPの会員様がたくさんいらっしゃる。そういった強みを連携することで、学生の方にもバリューを提供していきたい」、ケイ・オプティコムの上田晃穂氏は「大手キャリアさんで学割が適用するには固定回線が必須で、家族の新規契約が必要になるなど条件が厳しい印象。我々は学生に限ったプランというより、ファーストスマホを選びやすいプランを用意していく。使いやすく安い端末に、落としても大丈夫な端末補償など、色々なサービスを組み合わせてもトータルで大手より安い、そんな魅せ方をしていきたい」と語った。
鳴り響く「遠雷」、MVNO市場にも緊張感が
2016年のMVNO市場全体の評価と今後の課題について、IIJの佐々木氏は「SIMフリー端末のラインナップが強化された。一方で、これまで右肩上がりで伸びてきたMVNO市場にも遠くから雷の音が聞こえ始めており緊張感がある。(具体的には)大手キャリアさんのセカンドブランドが人気を集めつつあり、また格安SIMサービスが犯罪に利用されるなど悪い面も取り上げられている。2017年はより安心・安全にご利用いただくための取り組みが必須となる」と総括した。
ここでいう「大手キャリアのセカンドブランド」とは、ソフトバンクに吸収されたワイモバイルのこと。また、KDDIのセカンドブランド的な立ち位置で2016年の後半から攻勢をかけているのがUQ mobileで、au回線を利用する数少ないMVNOのひとつ、ケイ・オプティコムのmineoと顧客を奪い合う形になりつつある。
これについて、ケイ・オプティコムはどのように捉えているのだろうか。所感を尋ねられた上田氏は「セカンドブランドさんはお金持ちなのでテレビCMもバンバン打ち、店舗も拡大していける。MVNO事業者単体では、資金力の面で渡り合えない。しかし認知度を上げ、利用者の方に安心感を与えるにはある程度のCM、店舗数が必要になるのも事実。そこでコストのバランスを見ながらやっていくことが必要になる。大手キャリアのようにはいかないが、データを見つつ、ユーザーさんのニーズにしっかりと応えられるようにしていきたい」と答えるにとどまった。
スマホで差別化は難しい
格安SIMサービスで提供されるスマートフォンが均一化しつつある。MVNO各社では今後、どのように差別化を図っていくのだろうか。
これについてIIJの佐々木氏は「スマホのコモディティ化は、これまでも言われてきたこと。MVNOとして端末で差別化を図ることは難しい。IIJではウェアラブル端末、あるいは(組み込み型の)eSIM搭載スマホなど、オリジナリティのあふれる取り組みができたら良いと思っている」と回答。
ビッグローブの中野氏は「オリジナル端末の提供は考えていないが、今後とも魅力ある端末を揃えていきたい。ビッグローブではIoTに向けた端末なども提供している」、ケイ・オプティコムの上田氏は「積極的にオリジナル端末を開発していくというよりも、ニーズにあったものを出していきたい。当面は(ドコモ回線、au回線が利用できる)マルチキャリアのSIMフリー端末を採用していく。mineoオリジナルカラーなど、弊社限定の何かを出していけたら良い」と説明した。