Mavicの最大の特徴は、4本のアームを折りたたんでコンパクトにまとめられること。前の2本のアームは左右に、後ろの2本は上下に動かす。折りたたみ時のサイズは83×198×83mm。500mlのペットボトルより少し大きいぐらいだ。
本体がコンパクトなだけではない。送信機もグリップを折りたたんだ状態で眼鏡ケースぐらいのサイズになる。このデザインがまたよく考えられていて、グリップを広げた状態では手になじんで操縦しやすい。コンパクトなデザインに操作性が犠牲になっていない。
操縦スタイルは3つ。送信機にスマートフォンを装着し、DJI GOアプリを活用する。これが最も機能的で、撮影を楽しめる方法になる。また送信機だけでも飛ばせるし、スマートフォンを使って操縦することも可能だ。1つのスタイルに縛られないから、ちょっとだけ近くを飛ばしたい時は送信機だけ、送信機が充電されていない時でもスマートフォンがあれば大丈夫、というようにいつでも簡単にドローンを楽しめる。
Mavic Proは数多くのセンサーを備える。5つのカメラ、GPS/GLANASS対応のナビゲーション、超音波距離計測センサ、冗長性を備えたセンサー、24個のプロセッサなどから成るFlightAutonomyシステムによって、巧みに障害物を回避し、そこに止まっているかのようにホバリングする。RTH(Return-to-Home)機能で、離陸したホームポイントに自動操縦で戻すと、ほぼ同じ場所に着陸する。GPSの位置情報データだけではなく、離陸時に下方ビジョンシステムで撮影したホームポイントのデータに照らし合わせるなど、センサー類をフル活用しているのだ。
そうしたセンサー類の働きによって、Mavicはレスポンスよく動作し、初めて飛ばした時には正確にコントロールできる操縦性の良さに感心した。Mavicのようなサイズのドローンを室内で飛ばすのはお勧めできることではないが、三脚に設置して撮影しているような安定かつ慎重な飛行を実現するトライポッド・モードを使えば、狭いスペースやある程度の広さの室内でも制御可能だ。また、そうした飛行性能を活用したプロテクション機能の信頼性は高く、初心者向けのモードを選択することで初めての人でも失敗を恐れることなくドローンの操縦に慣れていける。また、人物やもの(車、ボート)などを追尾するトレース、対象にカメラを向け続けるスポットライト、手を振ってセルフィー撮影できるジェスチャーなど、遊び心のある飛行/撮影モードも豊富。コンパクトな機体に凝縮されたテクノロジが優れた安全性をもたらし、同時にドローンの魅力を伝える遊びの幅を広げている。
ドローンを飛ばす時の問題の1つに騒音が挙げられるが、コンパクトなMavicはPhoantomシリーズと比べて静かで音に対処しやすい。ノイズがドローン選びのポイントとなっていることは少ないが、実際にドローンを飛ばす上で大きな長所と言える。
カメラは1/2.3CMOSセンサーを備え、有効画素数は1,235万画素。UHD4K(3,840×2,160)ビデオを最高30pで撮影でき、フルHD(1,920×1,080)の場合は96pの撮影が可能。f2.2レンズは35mm換算で28mm、視野角は78.8度。3軸ジンバルのスタビライザーによって、ブレを抑えたなめらかな映像を記録する。
「Phantom 4」のカメラ性能との差の議論があるが、フライイングカメラとして十分に満足できる品質のビデオと画像を得られる。その上でPhantom 4相当であるかどうかは、さほど重要なことではないと思う。Mavicの価値は、最高のカメラではなく、カジュアルなフライイングカメラであることだからだ。
少し脱線して、Mavicで気になった点を挙げると、まず短すぎる後脚だ。折りたたんだ時のコンパクトさを実現するために短くなったと思うが、センサー類を収めた腹部と地面のすき間が1センチぐらいしかない。そのため離陸・着陸の場所に気をつけなければならない。また、モーターが小さいので、多少の風ならともかく、強い風には注意が必要だ。飛ばす前の風速チェックは欠かせない。
これらMavicの短所はコンパクトさに起因するものである。Mavicはポータビリティとパワーのバランスに優れたドローンであり、その意味では「ノートPCのようなドローン」と言える。高機能・高性能だが、パワフルではないので、プロフェッショナルの用途には向かない。ドローンにとって過酷な天候でも撮影を実現したい人、最高の映像を得たい人はパワフルなドローンを選ぶべきである。そこまで本格的ではなく、もっとカジュアルに空撮を楽しみたいという人たちには、Mavicは手軽さを含めて最高の体験を提供してくれる。空撮を身近にするフライングカメラ、カメラに例えたら1インチセンサーを備えたコンデジのような魅力を備えたフライングカメラである。