DJIが9月末に発表、米国などで販売を開始したコンシューマ向けドローン「Mavic Pro」。Phantomシリーズで蓄積してきたノウハウを凝縮し、またドローンに対する人々のイメージを変えるような斬新なデザインを実現している。誰でもドローンの面白さを堪能できるドローンであり、発売開始以来、米国で絶賛「品切れ」中が続いているのもうなずける。

空を飛ぶことに優れたものはデザインが良い、Mavicも例外ではない

4本のアームを折りたためば、コンパクトな塊に

コンシューマ向けドローン市場におけるDJI製品の今日の存在感はiPhoneに似ている。今回Mavicをしばらく使ってみて、私は「iPhone 5s」を使い始めた時を思い出した。

私にとって、iPhone 5sはコンパクトデジタルカメラを捨てさせたスマートフォンになった。向上したとはいっても画質はコンデジの完全な置き換えになるほどではなかったけど、iPhoneだったら撮影した写真をそのまま、いろんなアプリやサービスで利用できるメリットがある。メリットとデメリットを比べてiPhoneに軍配を上げた。

発表時にiPhone 5sは価格が高すぎると言われ、多くのアナリストがiPhoneはAndroidの低価格端末に市場を奪われると予想していたが、iPhone 5sにはiPhone 5sでしか得られない体験があった。コンデジの代わりになるようなカメラ機能がその1つであり、そうした価値を考えるとiPhone 5sは決して高くはなかった。だから、専門家やアナリストの予測を大きく上回る大ヒットになった(普及帯向けのiPhone 5cは失敗)。販売台数だけを見たらiPhoneはAndroidにシェアを奪われたが、多くのスマートフォンメーカーが利益が小さい廉価帯へと流れ、競争激化で、さらに低価格を強いられて利益を出しにくい状況に追い込まれた。一方、iPhoneは少ない競争の中で、利益を確保できる普及帯上位からハイエンドを制覇し、スマートフォン市場全体の利益を独占した。

同じことがDJIのドローンにも言える。ここ数年でコンシューマ向けドローンは数千円のトイドローンからFAA(連邦航空局)への登録が必要な高性能機まで、数多くの製品が登場している。だが、競争が激化しているのは廉価帯~普及帯下位である。操縦して面白いのは安定して遠くまで飛ばせる機体であるものの、いくら飛行性能に優れていてもただ飛ばすために1,000ドル前後以上の金額を支払う人は限られるからだ。

しかし、ドローンが「カメラでもある」ならどうだろう。DJIは廉価帯へ流れることなく、Phantomシリーズでカメラとして使えるドローンを追求してきた。価格は高いが、空撮カメラとしてカメラやスマートフォンでは得られないようなビデオや写真を撮れる。その面白さが評判になり、また普及帯上位~ハイエンドの競争が少なかったこともあって、米国において同社はコンシューマ向けドローンで利益が大きい実のあるシェアを獲得している。

飛ばすことは、ドローンでできること、ドローンの面白さのの入り口でしかない

そのDJIが普及帯上位のコンシューマ市場にドローンを大きく普及させるために投入したのが"フライングカメラ"「Mavic Pro」である。カメラ性能が良くてもドローンは大きくて重たく、飛行の習得にも時間がかかる。でも、カメラとして広く一般的に利用してもらうには、コンデジのように苦労なく持ち歩けて、簡単に撮影できなければならない。そこでPhantomシリーズで培ったノウハウを惜しげもなく投入し、そして人々が持ち運べるドローンをゼロからデザインし直した。Mavic Proは、初心者でも短時間の練習で操作できるPhantomシリーズの安定した飛行性能や飛行モードと、手軽に高品質な写真・ビデオを撮れる撮影機能を備え、そして普段使いのカバンにすっぽりと収まるコンパクトサイズである。価格は999ドルと安くはないが、この性能と機能を考えると1,000ドルを切った価格は魅力だ。ドローンに興味があって、かつカメラ好きの方なら、普段カメラに投じている金額を思い出して欲しい。これでしか得られない映像を記録できるカメラと考えたら、決して高くはないはずだ。