スーパーコンピュータ最大の学会である「SC16」において、米国のExascale Computing Project(ECP)が開始されることが発表された。

米国は、早くからExaScaleマシンの検討を行っており、2008年にはノートルダム大学のKogge教授が主査となって「ExaScale Computing Study」という報告書を出しているが、2020年に20MWの消費電力でエクサスケールのスパコンを作るのは無理で、2~3年は遅れるという見通しとなった。この時期なら、すこし時期的に余裕があるとのことで、エクサスケールマシンの開発開始が遅れていた。

しかし、もう着手しないと2023年の完成には間に合わず、米国のスパコンの優位性が守れないということから、開発に着手することになったものと思われる。

開発体制であるが、アルゴンヌ国立研究所のPaul Messina氏がプロジェクトのディレクタで、ローレンスリバモア研究所のStephen Lee氏が副ディレクタを務める。その下に、プロジェクトマネジメント、アプリケーション開発、ソフトウェアテクノロジ、ハードウェアテクノロジ、エクサスケールシステムを開発するチームが設けられる。また。システム全体をまとめ上げるインテグレーションマネージャとチーフテクノロジオフィサとして、Al Gaist氏がプロジェクトディレクタに直属する。プロジェクトの中心になるこれらの人間は、国立研究所のメンバーで固められている。

米国のエクサスパコンを開発するExascale Computing Projectの体制 (本レポートのスライドはSC16の"The Exascale Computing Project (ECP)"BoFでの発表スライドを撮影したもの)

実際にプロジェクトが動き始めれば、各国立研究所の人たちや、委託を受けた民間企業の技術者も加わるのであろうが、それは、まだ、これからのようである。

エクサスパコンの完成時期は2023年までとなっており、開発するスパコンは、現在の米国のトップスパコンの50倍の性能を目指している。ただし、これはTOP500に使われるLINPACK性能ではなく、実用的に使われるアプリケーションを動かした場合の性能比較である。

そして、10倍の電力効率(50倍の性能を10倍の電力効率という意味であるので)、現状のトップスパコンの5倍の電力で実現する。

信頼度は、故障で実行中のアプリケーションが止まるのは6日に1回以下という目標である。日本のポスト京スパコンは、1種類のマシンの開発であるが、米国のECPでは、少なくとも2種類のシステムを開発することになっている。

2023年までに、現状の米国のトップスパコンの50倍の性能を10倍の電力効率で作るのが目標。そして、故障などでアプリケーションが停止する頻度は6日に1回以下

なお、この図には書かれていないが、体制図にはアプリケーション開発やソフトウェアテクノロジの名前がみられるように、アプリケーション開発や基本ソフトウェアやツールの開発も重要な目標となっている。