それでは間違いなく今回のアップデートにおける最大の強化ポイント、有機ELパネルを用いたマルチタッチディスプレイ「Touch Bar」について。従来のファンクションキーの位置に新たに装備されたTouch Barは、そのファンクションキーの役割を果たすと同時に、対応アプリケーションごとにさまざまな機能がアサインされている。

従来のファンクションキーとしての役割も果たす

右端4つのボタン/スイッチは「コントロール・ストリップ」と呼ばれ、どのアプリケーションを起動しても必ず表示されるようになっている。その4つより左側にあるボタン/スイッチ類がアプリケーションが独自に割り当てた機能ということになる。コントロール・ストリップの左端にある「>」ボタンを押すと、ファンクションキーが表示され、その状態で左端にある「×」ボタンを押すとファンクションキーが非表示となる。このようにして切り替えて使う形となるのだ。スペシャルイベントの直後、「esc」が使えなくなるという説がSNSなどで流れたが、実際は残っている。物理的な「esc」がなくなっただけという話である。その「だけ」が問題なのかもしれないが、キーボード基本的に使わない筆者にはやっぱりどうでもいい。

上から「Safari」「写真」「メッセージ」アプリでの表示

アプリケーションごとに割り当てられた機能だが、例えばWebブラウザの「Safari」では新規のページを開くと「お気に入り」に登録してあるサイトがタブで表示される。これをタップすれば一発で見たいWebサイトに飛べる。メッセージやメールなどでは、テキストの変換候補や絵文字にサッとアクセスできる。「写真」アプリでは画像/ムービーをフルスクリーン表示させた際、「アルバム」などに格納された画像/ムービーをサムネイルで表示可能だ。これはフルスクリーン表示させながら他に見たい画像/ムービーを探せるので重宝することだろう。個人的には「Final Cut Pro X」に割り当てられている機能が気に入った。トリムの開始、終了点を指定できるほか、タイムラインの全体を表示させ、タッチ操作で編集したいポイントへジャンプできるのだ。実は、筆者、「Final Cut Studio」が「Final Cut Pro X」へと名称変更/アップデートされた際、アレ? と思ったクチで、「Avid Media Composer」「Adobe Premiere Pro」に浮気していた時期があった。久しぶりに触ったFinal Cut Pro Xは、少しまたUIが変更されていて、このボタンなんだっけかな? タイムラインのズームスライダーどこいった? となったのだが、主要なツールはTouch Barに表示されるようになったのだ。

ひとつのクリップしか並べてないが、Final Cut Pro Xではタイムラインの全体を表示させ把握できるようになった

ここで気付いたのだが、Touch Barはファンクションキーの代わりになるだけでなく、サブディスプレイとしての役割を果たすのだ。これは大きな意味を持つように思える。13インチのモデルでも主要ツールがそこにあることで、広い作業スペースが確保できているように感じられた。筆者は、どうしても必要と考えていて、長らく17インチの最終モデルを使っているのだが、多分、15インチモデルでも17インチの感覚で利用できるのではないだろうか。DAWで対応しているアプリケーションは未だないが、「Logic Pro X」が対応すれば、とりあえずいいかなというところではある。

現時点でTouch Bar対応アプリケーションを開発中のデベロッパをリストアップするとこんな感じだ。

  • 1Password (AgileBits)
  • Affinity Designer (Serif Labs)
  • Artistry Photo Pro (It's About Time Products)
  • Blogo
  • Coda (Panic)
  • DaVinci Resolve (Blackmagic Design)
  • Day One (Bloom Built)
  • djay Pro (Algoriddim)
  • Live Desktop (Halfbit)
  • OmniGraffle (Omni Group)
  • PicFrame (Active Development)
  • Pixelmator (Pixelmator)
  • PocketCAS for Mathematics
  • Sketch
  • QuickQuad

これらに加え、スペシャルイベントでAdobe、Microsoftが対応をアナウンスしている。Touch Barが定着するかどうかは、どれくらいのアプリが対応するかによるところだが、iPhoneで採用された「3D Touch」で対応アプリが急増したようにこれからどんどん、その数は増えていくことだろう。

それでもうひとつ思ったのは、Touch Barが定着するかどうかは、3D Touch同様、ユーザーがその利便性を発見できるかどうかにもかかっているということだ。3D Touchはそれを利用しないとiPhoneが使えないという場面はない、ただ、使うようになると使わずにはいられなくなる機能なのである。恐らくTouch Barも同じで、その使いやすさを見つけられないのであれば、使わなくても良い機能なのだ。Appleは便利ですよと喧伝はしても、使えという強制はしない。

さらにもうひとつ言うと、多くのユーザーは、そもそもファンクションキーの有用性に気付いていなかったのではないかということだ。これで改めて、ファンクションキー、それも物理的なキーが要るのであれば13インチの「ファンクションキー搭載モデル(Yoichi Yamashita氏に倣って、「Touch Bar非搭載モデル」とは呼ばない)」を選んだらいい。

Touch Barにおけるファンクションキー機能はカスタマイズもできる。ここでもまた、その有用性に気付くことだろう。

ファンクションキー機能はカスタマイズ可能

以前からAppleは日本市場を重要視してきたが、今年はApple Payなど、とても目立つ動きが多かった。Touch Barにもスペシャルな機能が用意されている。テキスト打つ際、ディスプレイには変換候補が現れるが、Touch Barには「かな」「カタカナ」「半角英数」「全角英数」という無変換ベースの候補が表示されるのだ。これも便利と感じる人には便利な機能であろう。

Touch IDでロック解除は一瞬

最後にTouch IDの機能に関して。ロックを瞬時に解除できるようになっただけでなく、Apple Payを使っての安全なオンラインショッピングをサポートしてくれる。システム環境設定やロックされたメモへのアクセスも一瞬だ。watchOSがアップデートしてApple Watchでもロック解除がパッと行えるようになったが、他の機能のことも考えるとTouch IDを使うことのほうが多くなりそうではある。