それほど大きな変革を見据えながら「目の前のものだけ耕し続けてもとても間に合わない」と考えて踏み出したのが、テクノロジー分野への出資を目的としたソフトバンク・ビジョン・ファンドの設立だ。10兆円規模の資金を調達し「人類史上最大のプロジェクトをソフトバンクが牽引する」と意気込む。

アジアインフラ投資銀行(AIIB)や全米のベンチャーキャピタル直近2年半分に匹敵する規模

投資実績は世界の大手ファンドと比較しても高い数字を挙げている

今後、数百億円以上の戦略的投資はファンド経由で行うこととなる。これにより、ソフトバンクが投資のために資産を切り売りしたり借金をする必要がなくなり、さらに「収穫期に入った」国内通信事業などから安定的にフリーキャッシュフローがあることで「構造的にバランスシートは改善する」ことが見込まれる。

ファンド設立により同社のバランスシート改善へ

ソフトバンクの現在の事業よりも、シンギュラリティを展望した今後の取り組みが発表の中心となった今回の発表会。質疑応答でこれからの孫氏の役割について問われると「自ら演奏するのではなく、それぞれがシナジーを出し合えるよう全体をオーケストレートする」ことが中心になると回答した。

「保険という事業を持ちながら投資事業を行うバークシャー・ハサウェイのように、テクノロジー業界のバークシャー・ハサウェイを目指している」のだという。

現金収入を生む事業を「日々、目の前の畑を耕す」ことにたとえ、それをおろそかにするわけではないが、異なる次元でテクノロジー分野全体の将来に打って出る姿勢を明確にした。昨年発表された長期成長戦略"ソフトバンク 2.0"の具体的な姿が1年半を経て浮かび上がってきた格好だ。

「シンギュラリティを迎えるにあたり、世界的戦略で、より安全を増しながら攻めていく構えを作る。これまでの反省を込めて"ソフトバンク 2.0"に臨んでいきたいと思います」(孫氏)