東北大学は10月12日、3次元ナノ多孔質グラフェンを用いたグラフェントランジスタの3次元集積化に成功したと発表した。

同成果は、同大大学院理学研究科・原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)の田邉洋一 助教、谷垣勝己 教授、陳明偉 教授、同大 高橋隆 教授、阿尻雅文 教授、伊藤良一 准教授、菅原克明 助教、北條大介 助教、越野幹人 准教授、ならびに東京大学理学系研究科の青木秀夫 教授(研究当時)らの研究グループによるもの。詳細は独科学雑誌「Advanced Materials」にオンライン掲載された。

グラフェンはその特性から、次世代の半導体材料として期待されているが、近年の研究から必ずしも2次元シート状であることが最適でないことが分かってきた。研究グループは、3次元構造のグラフェンに注目し、応用研究を進めてきており、今回の研究では、3次元ナノ多孔質グラフェンの表面積を活用することを目的に、超臨界CO2乾燥させたナノ多孔質グラフェンを作製し、トランジスタのチャネルとゲート電極に採用したほか、イオン液体を試料全体に浸透させることで、電気2重層トランジスタを作製したという。

実験の結果、同トランジスタは2次元グラフェンの特性を保持しつつ、静電容量は平面構造デバイス比で100~1000倍程度高い値を確認したほか、曲面上に閉じ込められた伝導電子が外部からかけた磁場方向に対してさまざまな向きを持つ、という3次元ナノ多孔質グラフェンに特徴的な振る舞いを確認。特に、電子の易動度は、要求値の200cm2/Vsを大きく上回る5000~7000cm2/Vsであることが確認され、シリコン代替素材としてデバイス性能をさらに高めることができる可能性が示された。

なお、研究グループでは、今回の結果を踏まえ、グラフェンさらには二硫化モリブデンなどを用いた原子層を利用した光応答デバイスや高集積された立体回路への実用化が進むことが期待されると説明しているほか、グラフェンやその他の原子層材料を用いた「3次元ナノ多孔質構造」における新しい材料創生への展開が併せて期待されるとコメントしている。

左は3次元ナノ多孔質グラフェントランジスタの模型図。右は(a)が走査型電子顕微鏡による3次元ナノ多孔質グラフェンの画像。(b)がゲート電圧に対するグラフェンの電子状態変調の模式図。(c)および(d)がゲート電圧に対する電気伝導度と静電容量の依存性 (出所:東北大学)