u-blox(ユーブロックス)は9月30日、共同設立者であり測位製品開発担当執行役員を務めるダニエル・アマン氏が来日し、同社の測位製品の展望について語った。

ユーブロックスのダニエル・アマン氏

自動運転でGNSSに求められるもの

ユーブロックスは現在、測位用途向けとして、m級精度の「標準精度」製品、cm級精度の「高精度」製品、自動車向けの「推測航法」製品、固定局での時刻および周波数の同期に用いられる「タイミング&周波数」製品を提供している。

具体的なアプリケーションとしては、車載ナビゲーションのほか外灯、セルラー基地局などのインフラ市場などがあり、近年では無人航空機(ドローン)において機体の安定化やナビゲーションを目的に同社の製品が使用されている。

ユーブロックスの製品とそのアプリケーション (提供:ユーブロックス)

こうしたアプリケーションで市場をリードする立場にあるユーブロックスだが、今後の注力領域としてアマン氏が挙げたのが自律走行(自動運転)システムだ。アマン氏は自律走行車の実現のためには同社の強みであるGNSSが必須の技術であるとし、その理由を次のように説明する。「自動運転の実現のために必要となる複数の測位技術の中で、GNSSは絶対位置と絶対時間、絶対速度と方向を捉える唯一の技術だ。あらゆる技術で動作し、(目印となる)ランドマークが無い砂漠でも動作でき、地図の精度もそこまで求められないためコスト的にも有利だ。また、車載センサーのキャリブレーションにも利用できる」(アマン氏)。ただ一方で、「現時点では自律走行の安全要件を全て満たす製品は出せていない」と語り、自律走行に求められる信頼水準の実現に向けて取り組んでいくとしたほか、測位データ以外にも「ハッカーなど外部からの攻撃に耐えうるセキュリティが確保されていなければならない」と付け加えた。

GNSSは自律走行おける必須技術の1つ(提供:ユーブロックス)

セキュリティも重要ポイントだ(提供:ユーブロックス)

三菱電機との連携についても言及

日本での取り組みについては、パナソニックの法人向けタブレット・タフパッドや三陽機器の自動草刈り機にユーブロックスの製品が使われており、日本企業とのパートナシップをアピールした。さらに、同日発表された「センチメータ級測位補強サービス(CLAS:Centimeter Level Augmentation Service)」に向けた三菱電機との連携にも言及。CLASは準天頂衛星システムから送信されるL6信号(測位補強データ)を受信することで利用できるサービスで、ユーブロックスは三菱電機と協力して、L6信号対応の自動車向け受信チップを開発していく。CLASは2018年4月よりスタートする予定だが、アマン氏によればサービス開始数カ月後にユーブロックスからL6信号対応の自動車向け受信チップを商品化する予定だという。

CLASの概要 (出所:三菱電機)

アマン氏は今後について、自動車だけでなくトラックや草刈機、ドローンを含む自律走行に向けた製品開発に取り組むほか、高精度製品をマスマーケットに対して広げていきたいと明かしたが、そのためには「セキュリティおよびコスト面で課題がある」とコメント。また、室内測位システムにも意欲的な姿勢を示し「精度に難があるBluetoothビーコンを超えるアプリケーションの実現に向けて取り組んでいく」と語った。