シャーシの改良とオーディオパーツの見直しは、WM1シリーズの音に大きな影響を与えている。初代のZX1以来続くシャーシと電源の改良こそが、ハイレゾ・ウォークマンとしての音作りに貢献しているからだ。

刮目すべきは、純度99.96%以上という無酸素銅を利用したWM1Zのシャーシ。約1.8kgの無酸素銅から削り出した躯体に約99.7%という高純度の金メッキを施し(この時点で約455g)、低インピーダンス化を狙ったものだ。グランド効率を高めることでS/N向上を図ろうという考え方は、初代ハイレゾ・ウォークマンZX1から連綿と続くもので、音質面での効果が期待できる。

エントリーモデルとなるWM1Aのシャーシはアルミ製だが、こちらもやはり削り出し。約500gのアルミブロックから得られる躯体は約267g、WM1Zと比べることはできないが、それでも手のひらにズシリとくる。

WM1Z(左)とWM1A(右)のシャーシ。いずれも左が削り出し開始前のブロックで、右がメッキ処理される前のもの

電源部は、電気二重層キャパシタと専用開発された電池パックの採用に注目だ。キャパシタの容量は500mFとZX2の約1.4倍に高められ、ヘッドホン出力アップを支えるとともに、瞬間的な大電力の供給を可能とし正確な信号出力に貢献するという。電池パックは電源ケーブルを±各2本に増やすとともに、保護回路基板のスルーホールを倍増させることで、それぞれの抵抗値を半減させている。アンプ部の電源として従来のOS-CONに変わり新開発の高分子コンデンサが採用されたことも、チェックポイントといえる。

信号経路へのこだわりも見逃せない。WM1Zでは、アンプ部からヘッドホン端子への線材に4芯Braid構造ケーブルを採用(バランス/シングルエンドとも)。高品質なオーディオケーブルで知られるKIMBER KABLEの協力を得たもので、ワイヤー間の干渉による信号劣化や外部ノイズからの影響を最小限に抑制するという。WM1Aは同じ部分に無酸素銅ケーブルを使うが、こちらもバランス/シングルエンドの両方をL/R GND分離したもので、音質向上に貢献している。

基板は両面に実装され、上部はアンプブロック、下部は電源/デジタルブロックで完全に分離されている(写真はWM1A)