新しいロボットコンテスト「Japan Innovation Challenge」が2016年10月、北海道・上士幌町の町有林で開催される。これは山岳救助を想定したロボット競技になっており、ドローンやローバーを使って、遭難者の発見・救助を行う。8月19日、都内で事前説明会が開催され、競技の内容について、主催者側から詳しい説明があった。

事前説明会の会場。参加を検討している技術者や研究者が集まった

トラストバンクの上村龍文取締役。高専ロボコンの経験者とのこと

説明会ではまず、主催者を代表して、トラストバンクの上村龍文取締役が挨拶した。上村氏によれば、この大会の狙いは技術発展と地域活性だという。

技術発展のために、こだわったのは実際のフィールドを使うということだ。ロボットにとっては、限定した環境を用意できる屋内競技の方が取り組みやすい。屋外のフィールドとなると、様々な天候や路面状況等に対応する必要があり、ハードルはかなり上がってしまうが、だからこそ「実用化にすぐ繋がるのでは」と上村氏は期待する。

競技会場は上士幌町の町有林。北海道ならではの大自然が広がる

ロボットが移動できるのは赤点で囲まれた範囲。広さは3平方kmもある

同社はもともと、ふるさと納税に関する情報総合サイトを運営するなど、地方の活性化に取り組んできた。東京から遠く離れた場所で開催するJapan Innovation Challengeには、地方に人を呼び込むイベントとしての側面があり、見学者のための無料観覧席も用意するという。今回は北海道だが、今後、地方を巡業していくことも検討しているそうだ。

上士幌町の職員は、ゆるキャラ「ほろんちゃん」を被りながら町をPR

現地イベント会場のMCは、声優の有野いくさんが担当するという

競技の課題としては、「発見」「駆付」「救助」の3つが用意されている。投入できるロボットの台数に制限はなく、操縦は自動でも手動でも構わない。ただし、無線制御である必要があり、有線制御は認められないという。なお、各課題の賞金は以下の通りで、それぞれ最初に達成したチームに授与される。

  • 課題1「発見」 50万円(毎日1組)
  • 課題2「駆付」 500万円(期間中1組)
  • 課題3「救助」 2000万円(期間中1組)

課題1では、遭難者に見立てたマネキンを捜索する。制限時間は60分で、各チームは同時にスタート。マネキンを見つけたら、位置情報と撮影画像を主催者に送信する必要があり、±30m以内の誤差であれば発見と見なされる。マネキンが置かれる場所は毎日変わり、服の色については当日朝に発表されるという。

課題1の達成条件

各課題で共通のルール

課題2では、発見したマネキンにレスキューキット(重さ3kgの箱)を届ける。制限時間は180分で、レスキューキットをマネキンの周囲3m以内まで運ぶことができれば課題達成となる。ただし、マネキンから50m以内への物体の投下は禁止されているので、ドローンで直接、マネキンのそばに落とすようなことはできない。

課題2の達成条件

レスキューキットの仕様

課題3では、マネキンを救助する。制限時間は360分で、マネキンをスタート地点まで搬送できれば課題達成だ。ただし、遭難者の体温の低下を防ぐため、搬送時にはマネキンを外気から遮断できる空間内に格納することが求められている。またマネキンが受ける衝撃の大きさにも制約があり、各方向とも1G未満に抑えなければならない。

課題3の達成条件

マネキンの仕様

ドローンだけで達成できる課題1はまだしも、課題2と3の難易度はかなり高い。特に課題3は、重量50kgのマネキンを運搬できる能力が必要で、大型で強力なローバーを用意しなければならない。またマネキンをどうやってローバー内に移動させるのかという問題もあり、挑戦するチームがいるのかどうかも見所の1つになりそうだ。

競技で使用するマネキン(左)とレスキューキット(右下の木箱)

開催期間は10月17日(月)から21日(金)までの5日間。今後、参加申請を9月5日まで受け付け、同16日~17日には現地説明会を実施する予定だ。参加は無料。なおこれまでのところ、すでに4チームが大会への出場を決めているそうだ。

競技会場の場所。町役場からは10kmほど離れている

開催期間は5日間。朝10時に始まり夕方4時に終了する