米AMDは17日(米国時間)、カリフォルニア州サンフランシスコで、記者説明会を開催し、同社が開発を進めている次世代CPU"Zen"(ゼン:開発コードネーム)に関する概要と、実働デモを披露した。

説明会に登壇したリサ・スー社長兼CEO

"Zen"アーキテクチャを採用する次世代CPUを紹介するにあたり、スー氏は「最高の製品は、まだ登場していない」として、Zenシリーズが、過去10年間においてもっとも競争力のある製品になると予告

「最高の製品は、まだ登場していない」と"Zen"の登場に期待を持たせる

新アーキテクチャの"Zen"では、AMDの現行アーキテクチャである"Bulldozer"シリーズとはまったく異なる。最新の"Excavator"コアと比較して、クロックあたりの命令処理性能(IPC)を40%高めるとともに、マルチコア化を加速する。

COMPUTEX TAIPEI 2016でスー氏が公開したSummit Ridge。パッケージはPGAタイプのようだ

今回のイベントでは、"Zen"シリーズで最初に市場投入されるデスクトップ向けCPU"Summit Ridge"(サミット・リッジ:開発コードネーム)の動作デモも公開した。"Summit Ridge"は、最大8コア/16スレッド構成を取り、同一クロック・同一コア構成のIntel製ハイエンドCPU"Broadwell-E"と同等のパフォーマンスを実現するという。

Intelの最新8コア/16スレッドCPUのBroadwell-Eとの比較デモも披露

実際の比較デモ

Summit Ridgeは、年内に出荷が開始され、2017年初にPCベンダーなどから搭載システムが発売される見通しだ。

アーキテクチャの概要も披露

続いて、AMD 上級副社長兼CTOのマーク・ペーパーマスター氏が、"Zen"アーキテクチャの概要を披露した。"Zen"では以下のような特徴を備える。

  • IPC(Instruction per cycle:クロックあたりの命令処理性能)の向上
  • SMT(Mimultaneous Multi-Threading)の実装
  • キャッシュ構造の改良
  • 分岐予測性能の向上

これらにより、ファンレス構成の2-in-1端末から、データセンター向けHPCソリューションまで、幅広いレンジで、パフォーマンスと省電力性能にすぐれた製品を投入できるアーキテクチャに仕上がったとアピールした。

Zenアーキテクチャの概要について説明するマーク・ペーパーマスター上級副社長兼CTO

CPUクロック1GHz突破、64bitアーキテクチャ、デュアルコアCPU、グラフィックスを統合したAPUの投入など、CPUの歴史において、AMDは常にエポックメイキングな舞台に立っていたとアピール

Zenアーキテクチャの設計においては、パフォーマンス、スループットとエネルギー効率の3つがテーマとなった

Zenアーキテクチャのブロックダイヤグラム

Excavatorコアにくらべて、40%以上のクロックあたりの命令処理性能を実現しつつ、省電力性能はそのままに保たれている

AMDは、Zenアーキテクチャをさらに進化させ、競争力のあるラインナップを展開していく計画を披露した

デスクトップ向けCPU"Summit Ridge"の特徴

新プラットフォーム「AM4」も投入

また、Summit Ridgeのプラットフォームには、第7世代AMD Aシリーズプロセッサ(Bristol Ridge)と共通のAM4プラットフォームが採用される。このプラットフォームにおいては、

  • DDR4メモリ
  • PCI Express Gen.3
  • USB 3.1 Gen.2(10Gbps)
  • NVMe
  • SATA Express

のサポートが表明され、プラットフォームレベルでも従来から大きな機能強化が図られる計画だ。ただし、Zenプロセッサと組み合わされるチップセットの詳細などについては、製品投入時に明らかするとして、今回は明かされなかった。

デスクトップ向けCPU"Summit Ridge"の特徴

USB 3.1 Gen.2対応をうたうAM4プラットフォームのリファレンスマザーボードでは、I/OパネルにType-Cコネクタも搭載。また、AシリーズAPU用にディスプレイ出力も用意されていた

また、スー氏はZenアーキテクチャを、2017年第2四半期にはサーバー市場にも拡大するとして、36コア/64スレッドの2way SoC"Naples"(ネープルス:開発コードネーム)と、そのプラットフォームを公開。

サーバー向けSoC"Naples"も投入する

Zenアーキテクチャを採用するサーバー向けSoC"Naples"の2wayシステムを紹介するリサ・スー氏

Naples 2wayマザーボード。メモリチャネル構成などについては明らかにされていなかった。また、チップセット機能はSoCに統合されているようで、基板構成はシンプルに保たれている

Naples 2wayマザーボードの背面。ソケットはLGAタイプのようにも見える

さらに、2017年後半にはZenアーキテクチャを採用する次世代APUを投入するとともに、組み込み市場向けにもZenアーキテクチャを拡大していく考えを示した。

AMDはZenコアをデスクトップやサーバー向けだけでなく、ノート向けAPU、組み込み市場向けにも拡大していく

2017年は、Zenアーキテクチャを採用したCPU群と、次世代GPU、そして新しいカスタムSoCによって、さらなる成長を果たすとアピールした

なお、Zenアーキテクチャの詳細については、8月21~23日にカリフォルニア州クパティーノで開催される高性能チップに関する技術会議「HotChip 28」で公開される予定だ。