かけ放題サービスも

MVNOが提供する通話定額サービスは、5分定額だけではない。4月には「もしもシークス」ブランドで通信サービスを提供するエックスモバイルが、5分間通話定額の「かけたい放題ライト」だけでなく、月額1,800円で通話定額を実現する「かけたい放題フル」の提供を開始。また7月には「イオンモバイル」を展開するイオンが、月額1,500円で通話定額になる「050かけ放題」の提供を発表している。いずれも専用のアプリを用いる必要があるほか、連続通話時間に制限はあるという制限はあるものの、MVNOでは難しいとされてきた長時間の通話定額も実現しているのが特徴だ。

イオンモバイルも7月より、月額1,500円の「050かけ放題」オプションの提供を開始。IP電話の仕組みを用いることで通話定額を実現している

MVNOにとってある意味"厄介者"だった音声通話

しかしながら、通話定額サービスに力を入れるMVNOが急増したのは、ここ1年以内のことだ。それ以前のMVNOの発表などを見ていると、「音声通話は不要だ」と言い切る企業が少なからず存在するなど、音声通話はMVNOにとって、積極的にやりたくないサービスでもあった。それだけに、ここ最近MVNOが音声通話に突然力を入れるようになったのには、ある意味不思議な印象も受ける。

ではなぜ、MVNOはこれまで、音声通話サービスにあまり力を入れてこなかったのだろうか。その大きな理由は、音声通話はデータ通信と比べ、MVNOが制御できる余地が少なかったことにあるといえるだろう。

各MVNOのサービスを見ると、データ通信に関しては「3GB当たり980円」といったように容量別の料金プランだけでなく、使用したデータ通信量に応じて料金が変化売るプラン、そして「1日当たり500MB」といったように日当たりの通信容量が決まっているプランなど、多彩なプランが用意されていることが分かる。だが音声通話に関しては、どのMVNOも従来30秒20円で固定されており、通話定額など独自のサービスを除けば、各社とも料金の違いは全くない。

なぜこのような差が生まれているのかというと、それはMVNOとキャリアとの枠組みに起因している。データ通信に関しては、MVNO側の設備をキャリアの設備に接続する仕組みが用意されていることから、MVNO側の設備でさまざまな制御を施すことにより、自由度の高いプラン設計などができる。だが音声通話に関しては、MVNO側の設備をキャリアの設備に接続することをキャリアが認めていない。そのため音声に関しては、MVNO側が自由にサービス設計することができず、差異化ができないのだ。

その関係は現在も変わっておらず、従来の枠組みの中では、音声通話に関して他社と差異化することはできない。にもかかわらず、MVNO側が通話定額サービスを提供するなど、音声通話にも力を入れるようになった理由は、MVNOを取り巻く市場環境の変化にある。