富士通アイソテックは、2016年夏の「パソコン組み立て教室」を開催した。
同社が毎年、子どもの社会学習機会やものづくり体験、地域貢献などを目的に開催している小中学生対象のPC組み立て教室だ。この2016年は新たな取り組みとして、プログラミング学習の体験を取り入れている。ここでは、富士通のデスクトップPC生産拠点である富士通アイソテック(福島県伊達市)で30日に行われた、PC組み立て教室の様子を紹介しよう。
2016年 富士通パソコン組み立て教室の概要(デスクトップPC) | |
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定員 | 20組 |
応募条件 | 小学校4年生~中学校3年生 |
組み立てるPC | ESPRIMO WF1/X(液晶一体型PC) |
参加費用 | 無料(※PC購入希望の場合は特別価格で提供) |
2016年、新たにプログラミング体験を追加
富士通アイソテックのPC組み立て教室は、2016年で13回目を迎える。
当初は大勢の参加者が組み立て教室に申し込んでいたが、「ここ数年はPCの市場規模の減少に伴い、申し込みも少なくなってきていた。そして我々の取り組みもマンネリ化していた部分もあった」(富士通アイソテック 代表取締役社長の岩渕敦氏)。ここ4~5年ほど、定員割れしている状態が続いていたという。
「何が参加者の魅力になるのか」を考えた結果、この2016年ではPCの組み立てに加え、新たにプログラミング学習体験を取り入れた。外部から専門の講師を招き、子ども向けのプログラミング言語Scratchを教材に、簡単なプログラミング体験の時間を追加した。
合わせて、同社が位置する福島県伊達市の教育委員会にも協力を仰ぎ、周知に務めた。2016年4月に文部科学省が小学校におけるプログラミング教育の必修化を検討すると発表しており、富士通側から持ちかけた話だったが、教育委員会側も興味を持ち、当日は関係者もイベントを視察した。
このほか、2014年までは申込時に必要だったデスクトップPCの購入をなくし、参加費を無料に。また、今回はPCの組み立て場所を従来の会議室から変更し、実際に製品の組み立てラインがあるE棟を組み立て教室の会場とした。
これら取り組みが奏功し、2016年は20組の定員を上回る応募があり、抽選による参加となった。
本物の製造ラインを使ってPCを組み立て
PC組み立て教室に参加したのは小学生12名、中学生10名の20組22名。県内20名に加え、県外からも2名が参加した。
今回組み立てるPCは、富士通の23型液晶一体型PC「ESPRIMO WF1/X」。CPUにCeleron G3900T、4GBメモリ、1TB HDD、光学ドライブなどを備えたホームユース用途の製品だ。参加者が小中学生のため、すでにおおまかな組み立てが済んでいる状態でスタートする。今回の組み立てでは、メモリ、ストレージ、光学ドライブの3パーツを本体に取り付け、カバーをネジ止めして終了する形で進んだ。
組み立て教室は休日の開催だったが、奇しくも同社では台数増産のため、E棟に6列あるデスクトップPC生産ラインのうち、2ラインを稼働させている状態だった。参加した子どもたちは、実際に販売するPCをプロが組み立てている隣のラインで、PCを組み立てていた。
それでは、写真で組み立ての様子を紹介しよう。今回は筆者も実際に組み立てに参加してみた。
組み立てる時には、小学生には一人につき一人、中学生には二人につき一人、富士通アイソテックのスタッフがサポートにつく |
工場(E棟)へ入る前に、衛生用の帽子が配られた |
今回組み立てる「ESPRIMO WF1/X」。マザーボードなど、すでに大きいパーツは取り付けられている |
組み立て体験は、実際の製造ラインの一部を空けて行われた |
参加者はまず必要なパーツを取りに行く。今回はメモリ、HDD、光学ドライブの3点 |
組み立て教室用の生産指示書。記載のバーコードを読み取ると、必要な部品が置いてあるランプが光る(デジタルピッキング方式) |
Scratch2.0を使った個性的な作品が登場
続いて、プログラミング体験の様子を紹介しよう。講師は児童向けのScratch解説書「小学生からはじめるわくわくプログラミング2」(日経BP)を執筆した、ボランティア団体「OtOMO」代表の倉本大資氏。
使った言語はScratch2.0。Scratchは子ども向けのプログラミング学習環境。目的に応じたさまざまな要素(ブロック)が用意され、ドラッグ&ドロップの基本操作だけでスクリプトを組んでいくことができる。
今回はScratchに登場するキャラクター、スプライトを自由に動かして作品を作っていった。子どもたちはコツをつかむにつれ、自分で考えながら要素を組んでいき、最後には時間が足りないという意見も出ていた。
ボランティア団体「OtOMO」代表の倉本大資氏。こども向けのプログラミングワークショップを定期的に開催している |
Scratch2.0のインタフェース。Webアプリケーションとなっており、ブラウザでScratchのURLにアクセスするだけで利用できる。右側がプログラムを作るための作業エリア。中央の情報エリアから要素(ブロック)をドラッグ&ドロップして組んでいく |
PC組立教室を終え、今回初めて参加した小学生の女の子は「PCの組み立てが楽しかった」と話した。また、女の子の保護者は「今まで参加したかったが、都合が合わず参加できなかった。プログラミングは自分も聞いていて『なるほど』と思った。スタッフも親切だった」と満足そうな様子だった。
岩渕氏は、「活動は効果がすぐに現れるものではないが、参加者が楽しそうにPCを組み立てたりプログラムを組んだりしており、ものづくりの楽しさを伝える取り組みを企業としてやる必要がある」とコメント。PCの組み立てに関しては、「ちょっと簡単すぎたかな」と笑いつつ、「パーツを取ってくるところを丁寧にやりたかったが、時間的な制約も多かった。ただ、子どもたちが笑顔で反応も良かった。もし来年もやるなら、今年の課題を改善して臨みたい」と笑顔を見せた。