LINEは15日、東京証券取引所市場第一部に上場した。米国時間14日には、ニューヨーク証券取引所にも上場しており、日米同時上場を果たした。今回の件は大きな話題を集めたが、そこには1つの素朴な疑問が残る。アジアの重点国に注力しているLINEがなぜ米国で上場する必要があったのかだ。

LINEの重点地域

LINEが目下、注力しているのは、日本、タイ、台湾、インドネシアだ。全世界の月間アクティブユーザー2億1800万人(2016年3月時点)のうち、この主要4カ国だけでMAUは1億5200万人と全体の約7割を占める。日本、台湾、タイではMAUが1位、インドネシアは1位ではないものの、上位に位置づけられている。

主要4カ国で月間アクティブユーザー(MAU)は全体の約7割を占める

LINEは全世界をターゲットにユーザー獲得にまい進していた時期もあったが、世界各国でシェアナンバーワンを狙う陣取り合戦はほぼ終わりを迎えており、2015年あたりを境に戦略を転換。選択と集中を進め、主要4カ国でのユーザー数を伸ばし、マネタイズを図った。あるひとつの国・地域において、ナンバーワンのユーザー数、もしくは上位を保つことが最重要なのがメッセージングサービスの世界だ。友達が友達を呼び、ビジネス基盤は強化される。逆に人がいなければ、マネタイズはおろか、使われないサービスとなってしまうというわけだ。

LINEは上場後も、今後もこの主要4カ国に力を入れていく。上場により得た資金をもとにターゲット市場でのユーザー獲得とマネタイズを進めていく。主要4カ国の合計人口は約5億人であり、そのうちの70%以上80%くらいまではユーザーを伸ばせるという見立てだ。その後は、主要4カ国以外の東南アジア各国、中東などの地域を狙っていく。

主要4カ国でのユーザーの獲得とエンゲージメントの強化、サービスの拡充とマネタイズを進め、タイミングを見計らってその他の国を狙っていく

さて、こうしたLINEの戦略を踏まえたうえでひとつ大きな疑問が残る。それは、なぜ米国で上場したのかだ。日本はLINE発祥の国とされ、ユーザー数も多く、売上も多い。資金調達を考えた場合に、東京証券取引所が選択肢あがるのは自然な流れだ。

しかし、先にも説明したように、LINEは米国を直近のターゲットエリアとしていない。メッセンジャーアプリの王者、フェイスブックの牙城を崩すために米国で上場したというのであれば納得できるが、米国市場はそもそも狙っていないのだ。