2016年7月9日(現地時間、日本は7月10日朝)、MicrosoftはWindows 10 Insider Preview ビルド14385を、Fastリングを選択したPCとモバイルデバイス向けにリリースした。本ビルドも2016年8月2日リリース予定のAnniversary Updateに向けたバグフィックスが中心となっている。

週末なのにリリースされたInsider Preview新ビルド

わずか2日間で新ビルドをリリースことについて、Microsoft WDG(Windows and Devices Group) Software EngineerのDona Sarkar氏は「サプライズ!」「クレイジー」と表現しているが、2016年に入ってからFastリングのリリース間隔はそれまでの月1回前後から、1週間程度のサイクルに変更した。当時の担当者だったMicrosoft WDG Engineering Systems TeamのGabriel Aul氏は、「フィードバックに応える」という形で本サイクルを選択したと説明していたが、数日かつ週末に新ビルドリリースという流れは驚きを覚える。これはAnniversary Updateリリースまで残された時間が少ないのはもちろんだが、OSにもDevOps的なソフトウェア開発手法が浸透し、これまでのOS=堅牢性を優先して着実に開発を進める、という旧態依然の姿勢から本気で脱しようとしているからだろう。

Anniversary Updateをリリースする8月2日まで、あと何回Windows 10 Insider Previewがリリースされるのか、推し量る術はない。だが、興味深いのがWindows 10 November Update(=Threshold 2)をリリースした際のビルド番号である。Threshold 2はちょうどビルド10586だった。PCに詳しい方ならお気付きのとおり、「586」はIntel Pentiumに付けられた名称の1つである。今回のビルド10385をRTM候補とし、次のビルド10386でフィックスするのであれば、Intel 80386を暗に示す「386」という数字が使用可能になる。

もちろん、こんな理由でビルド番号を調整しているとは考えにくく、BuildFeedを確認すると、内部ビルドは14387に達しているため、あくまでも妄想レベルの話だ。しかし、ファーストバージョン(=Threshold 1)はビルド10240。「1024」というプログラマーには、なじみ深い数字を用いたため、Anniversary Updateにも何らかの"イタズラ"が仕掛けられるのではないだろうか。

さて、いつもどおりPC版およびモバイル版の主な改善点と既知の問題を紹介しよう。まずはPC版の改善点から。

  • 試用期限が2016年7月15日までというポップアップ通知が現れるバグを修正した。

ちなみに筆者の環境では同通知は一度も現れていない。また、前回の記事でバージョン情報ダイアログから、「評価版」の文字が消えたと述べたが、環境によっては消えないこともあることを付け加えておく。

  • Surfaceシリーズにおけるバッテリー消費を改善。
  • 音楽ストリーミングサービスの「Spotify」で音楽を再生していると、時々クラッシュする問題を修正した。
  • Google Chromeを最大化した状態で使っていると、ウィンドウがクリップされる問題を修正した。
  • 「モバイルホットスポット」使用時にホストPCがBSoD(BlueScreen Of Death)が発生する問題と、5GHz帯域で接続していると特定のWebサイトを参照する際にホストPCがハングアップする問題を修正した。
  • VPN接続時にPIN入力プロンプトが、他のウィンドウのバックグラウンドに回ってしまう問題を修正した。
  • Microsoft Edgeの拡張機能である「LastPass」および「AdBlock」のメニュー項目とステータス情報が表示されない問題を修正。また、現在のタブを閉じた後でMicrosoft Edgeがハングアップする問題を修正した。
  • プロジェクション機能の既定はオフだが、Continuum for Phoneなどから接続する際は「許可した場合はWindows PCとWindows PhoneからこのPCに出力できます」の設定を、<どこでも使える><セキュリティで保護されたネットワーク上のどこでも利用可能>を選択する。

次はモバイル版の改善点を紹介する。

  • Microsoft EdgeでPDFファイルを開いた際にスクロールやパン、ズームといった操作ができない問題を修正。
  • Lumia 830/930/1520など古いデバイスのバッテリー寿命を改善した。
  • デュアルSIM機能を備えるデバイスで、SIM名を誤って取得する問題を修正した。

ここからはPC版の既知の問題を紹介する。

  • Hyper-Vの仮想マシンでセキュアブートが有効にし、Windows Server 2016 Tech Preview 5が正しく動作しない。その場合は一時的にセキュアブートを無効にすることで回避可能だ。
  • 英語以外の言語で「更新とセキュリティ」の<開発者向け>で<開発者モード>を選択している場合、エラーコード「0x80004005」が発生するが、Visual Studioなど開発ツールはそのまま使用できる。

Visual Studioまたは Windowsデバイスポータルのデバッグ機能を有効にすると発生する問題だがこちらを改善するには、「設定」の「システム」から<アプリと機能>を開き、<オプション機能の管理>をクリックする。続いて、<機能の追加>をクリックし、<Windows開発者モード>→<インストール>ボタンと順にクリック。その後、コマンドプロンプトを管理者権限で起動し、「sc config debugregsvc start=auto」を実行する。<開発者向け>を開くと、以前と変わらず同じエラーコードが表示されるが、Windowsデバイスポータルおよびデバイスの発見機能は正しく動作する。

Windows 10 Insider Previewで開発者モードを選択すると、パッケージのインストールに関するエラーは以前から発生していた

<機能の追加>から「Windows開発者モード」を手動でインストールし、関連するサービスを手動で自動起動に切り替えると、モバイルデバイスにアクセスできないといった開発者向け問題は解決する

最後にモバイル版で確認されている既知の問題を紹介する。

  • 「ボイスレコーダー」の通話記録が正しく動作しない。
  • Microsoft EdgeのInPrivateモード使用時にキーボードが現れない。その際は<Microsoftのプライバシーに関する声明を読む>をタップし、Webページが開いてからアドレスバーにURLなどを入力する。
  • OneDriveに格納しているバックアップ形式を変更し、サイズ縮小に努めている。その結果、Windows 10 Insider Previewのバックアップデータを、Windows 10 Mobile ビルド10586に復元すると、スタート画面のレイアウトが復元しないなど正しく動作しない。

ビルド14385では、Insiderブラウズ実行時にキーボードが現れなくなる問題が発生中。この場合はリンクをタップしてWebページを表示させれば、キー入力が可能になる

阿久津良和(Cactus)

前回の記事はこちら
・Windows 10 Insider Previewを試す(第59回) - 「評価版」の文字が消えた!ビルド14383登場
http://news.mynavi.jp/articles/2016/07/08/windows10/
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