キャリアに匹敵する契約数を目指す楽天、真の狙いは?

メイン回線の利用に狙いを定め、加入者拡大に向けた施策を次々打ち出している楽天だが、同社は楽天モバイルの拡大で何を狙おうとしているのかというと、それはキャリアに匹敵する規模の契約数を獲得することである。楽天の代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏は、楽天モバイルの事業戦略を打ち出した2014年10月29日の発表会で、1000万契約を目標にすると話していたことが、その根拠となるだろう。

楽天モバイルの展開当初、楽天の三木谷氏は時期こそ定めなかったものの、1000万契約を目標にすると話していた

実は楽天は、2012年9月にイー・アクセスと合弁会社を設立し、イー・モバイルの回線を活用した「楽天スーパーWiFi」を展開しているが、このことは当時、資金繰りに困っていたイー・アクセスに、楽天が接近し、モバイル事業に力を入れる動きとして注目されていた。もっともイー・アクセスはその後、現在のソフトバンクグループに買収されたため、結果的にこの取り組みが楽天のモバイル事業拡大に直接つながることはなかった。だがMVNOの拡大でモバイル通信事業に参入しやすくなったことを受け、楽天は改めてこの分野へのチャレンジを進めてきたといえる。

とはいえ楽天が、楽天モバイルの規模拡大で狙っているのは、通信事業でキャリアと争うことではなく、あくまで楽天経済圏を拡大することであろう。スマートフォンは多くの人が手にするインターネットデバイスであり、スマートフォンの通信と端末を自社で押さえることは、自社のネットサービス利用のタッチポイントを押さえることにもつながるからだ。

大手キャリアは通信を主体として、その上にネットサービスを提供することで通信の利用を拡大し、売上を高めようとしている。だが楽天は逆に、ネットサービスを主体としながら、通信を取り込むことでサービスの利用機会を増やし、売上拡大につなげようとしているわけだ。

もっとも、楽天モバイルが目指す"1000万"という規模感は、イー・アクセスとウィルコムが合併した当時の、ワイモバイルの加入者数とほぼ同等である。両社が大手キャリアとの競争で加入者獲得に苦しみ、買収されたり、経営破たんしたりしていった経緯を考えると、同様の規模に達するまでには相当な困難が予想される。MVNOの中では"勝ち組"に入りつつある楽天モバイルだが、MVNO同士の競争から抜け出し、一層の規模拡大を実現するには、さらなる一手が求められていることは確かだ。