様々な機能の背景に、「同じApple IDで複数のデバイスを利用する」というAppleの基本的な体験作りのルールが鮮明になってきた。

前述の複数のデバイス間の連携も、同じApple IDでログインしたデバイス同士が基本であり、写真もiCloud DriveもApple Musicも、同じApple IDでログインしていることで、1つのデータにアクセスすることができるようになる。

macOS Sierraというネーミングから、iOSに従属する存在と目される新しいMac向けのOS。開発者からは早くも、OS Xという名前でより上位に位置していることが明確だった頃を懐かしむ声も聞かれる。

ただし、今回5日間という短い期間ながら、macOS Sierraに触れてきて筆者が感じたのは、macOSは、iOSやwatchOSやtvOSとともに、Apple IDで利用するAppleのクラウドサービスを使いこなすための「バラエティに富んだ手段の1つ」という位置付けと捉える方が適当だ、ということだ。

Macを使っていて、そうした印象を受けたのは初めてのことで、非常に新鮮な体験だった。

Appleは、そのデバイスやサービスについて、プライバシー、セキュリティを強調している。デバイスからクラウドまでを1社で構築するメリットは、体験の一貫性とともに、今後より大きくなっていくのではないだろうか。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura