和菓子とコーヒーという一見するとミスマッチな組み合わせを前面に打ち出し、日本人に合う味を追求した新ブランド「煎」の普及を図る味の素ゼネラルフーヅ(AGF)。「和菓子の日」の前日にあたる2016年6月15日には、表参道ヒルズで「珈琲♡和菓子アワード2016」を開催し、コーヒーと最も相性のよい和菓子として愛媛県の「一六タルト」を選出した。和菓子との組み合わせにより、これまでとは違うコーヒーの飲み方を提案するAGFだが、果たして新たなトレンドを生み出せるのだろうか。

珈琲♡和菓子アワードは今年から始まったイベント。47都道府県でコーヒーに合う和菓子を選出し、一般投票でグランプリを決めた。写真中央右はグランプリに輝いた一六タルトの玉置泰代表取締役社長。オレンジページくらし予報モニター192人の試食選考により、鳩サブレーで「オレンジページ賞」を受賞した豊島屋の久保田陽彦代表取締役社長(写真中央左)も登壇した。グランプリ発表のプレゼンターを務めたのは、お菓子好きで知られるフリーアナウンサーの渡辺真理氏(写真右端)

AGFが第3の柱と位置づける「煎」

「日本のコーヒー」と「日本が欲するコーヒー」を掛け合わせた造語「JapaNeeds Coffee(ジャパニーズコーヒー)」を標榜し、日本人に合うコーヒー作りを追求しているAGF。同社取締役社長の横山敬一氏がジャパニーズコーヒー路線の「フラッグシップモデル」と位置づけるのが2015年に立ち上げた新ブランドの「煎」だ。

日本人の味覚を探求し、日本の水(軟水)に合うコーヒーに仕上げたとAGFは「煎」の出来栄えに自信を示す。「ブレンディ」と「マキシム」という有力ブランドを抱える同社は、「煎」を第3の柱に育てる「3大ブランド戦略」を推進している。

日本人に合うコーヒーを開発した背景とは

そもそもAGFが、日本人に合うコーヒーを開発するに至った経緯はどのようなものだったのだろうか。「煎」を担当する同社家庭用事業部 家庭用第一部HRCグループ統括マネージャーの三浦優子氏に伺うと、背景となっているのは日本で長年の間コーヒーに取り組んできたAGFが持つ膨大なデータだという。「日本人の嗜好を分析した膨大な科学的データを持っており、日本人の嗜好性を再現する技術に長けているという自信がある」(三浦氏)というAGFが、そのノウハウを結集して作ったのが「煎」だ。

ちなみに「煎」の味は「バランス重視」とのこと。苦味や酸味といった、コーヒーの特徴となる部分はあえて尖らせず、「丸く、やわらかく、深みのある味」を心掛けたという。

コーヒーに最もよく合う和菓子に選ばれた一六タルト。愛媛県産の柚子と白双糖を加えたなめらかなこしあんを、しっとりとしたスポンジで巻いた逸品だ

「和食や和菓子といった日本の食生活に合うような味」(三浦氏)を追求して「煎」を作った以上、和菓子とコーヒーの組み合わせを提案するイベントをAGFが仕掛けるのは自然な流れといえる。いかにもミスマッチな組み合わせであるがゆえに、「珈琲♡和菓子アワード2016」には人々の耳目を集めるという効果もあった様子。表彰式の後、同じ会場で開催された1日限定のイベント「珈琲♡和菓子展」には、開始前から入場待ちの列ができていたほどだ。同イベントの来場者数は1,190人に達したという。