ビジネスプラットホームとして進化できるか?
先進性の高い取り組みを行うGoogle Playストアだが、App Storeの影響力は、今もなお絶大だ。スタートアップは、少ない資金でアプリ開発を行い、効果的にユーザーを集め、次の投資を狙う「iPhoneファースト」戦略を未だに実践している。
アップルは、新興市場への進出を図る戦略を崩していない。中国への進出に続いて、インドに対して、トップ渉外も含む積極的なアプローチを行っているところだ。
ただし、アップルはデバイスメーカーとして、デバイスからの収益を確保する一方で、サービスでの収益の拡大を狙う必要にも迫られている。iPhoneの販売量は、2016年第1四半期でブレーキ、第2四半期で下落し、右肩あがりの成長が踊り場を迎えている点から、新規ユーザーを膨大に獲得することによる自律的なアプリストア収益成長のフェイズは終わったとみても良いだろう。そのために、iCloudやApple Music、App Storeの持続的な成長を描いていくことが重要になっているのだ。
今回のアップルによるApp Storeのビジネスモデル変更は、ストア開設から8年目の大きな転換点となり、開発者の持続的な成長を支えるビジネスプラットホームとして、より一段と開発者に対する傾聴を深める必要があるだろう。
開発とユーザー獲得の効率性がポイントに
筆者は、今回のApp Storeの変更をポジティブに受け止めている一方で、依然として、ビジネス設計の柔軟性の面でグーグルには追いついていないと評価している。
しかし、アップルが開発者に提供している強みは、アプリ開発とユーザー獲得の効率性だ。この点をより拡大させていくことは、Googleへの対抗策として有効であると考えている。
アップルは、iPhone、iPad、Apple Watch、Apple TVといった異なるデバイス向けのアプリを束ねて開発できる。iPhone・iPadアプリはユニバーサルアプリとして、どちらでも動作するアプリを実現してきたし、Apple Watch向けアプリはiPhoneアプリに内包される。異なるデバイスながら、開発の効率性を高めることができるだろう。
また、スマートフォンと同じブランドのアプリをスマートウォッチやセットトップボックスで利用する、といった異なるプラットホームでのユーザー獲得も効率的だ。
ここにMac向けのアプリを加えるべきだが、同じアプリを複数のデバイスで活用するスタイルを提案することは、開発者に対しても一貫した体験のデザインを促し、よりサブスクリプション型のビジネスモデルを描きやすくする。
iPhone単体で業績を牽引する時代から、複数のデバイスで構成する"ライフスタイル"を提供するプラットホームでの成長の時代へ。今回のストアのビジネスモデルの変更は、アップルと開発者にとって大きな転換点となる。
アップルは、開発者向けの年次イベント「WWDC16」を米国時間6月13日から開催する。年次更新されている各種OSや開発環境、新たなAPI、そしていくつかのハードウェアの発表も含まれるとみられている。特に注目したいのは、前述の通り、複数のデバイスで構成する"ライフスタイル"を、いかに開発者に活用してもらえるようにお膳立てするか、だ。