「イノベーション」とはそもそも何なのか

トムソン・ロイター Citation Analyst David Pendlebury氏

同シンポジウムを主催するトムソン・ロイターからは、「トムソン・ロイター引用栄誉賞(引用分析によるノーベル賞受賞者予測)」をはじめ、学術分野でさまざまな引用分析を手掛けるDavid Pendlebury氏が、イノベーションの評価の仕方について解説した。

同社はこれまでにもイノベーションに注目してきており、たとえば「Top 100 グローバル・イノベーター」として、世界で最も革新的な企業・機関を毎年選出し、発表している。これは、特許出願後に登録まで至った「成功率」、米国特許商標庁、日本国特許庁、欧州特許庁、中国専利局といった4つの主要市場の特許当局に出願された件数から算出される「グローバル性」、特許登録後の引用数をベースとした「影響力」が評価軸となっているものだ。

大学におけるイノベーションの評価に着目してみると、米国国立科学財団のレポートでは、特許、ロイヤリティ・フィーの取引、ベンチャーキャピタルからの資金提供といったシンプルなアプローチで測ろうとしている。一方、スイスにおいては、博士課程の修了者数、論文数やトップ10%の被引用数、研究開発に対する投資、ベンチャーキャピタルからの資金、特許などといったさまざまな指標を用いることで、より細かい形でイノベーションの形を分析した調査もある。また、大阪大学が18位にランクインした「革新的な大学ランキング」は、主に特許の被引用数がベースとなっているが、そのほかに産業界との関わり、学術論文など10項目の指標から大学のイノベーションについて評価している。

オープンイノベーション推進の流れがある昨今では、成果が誰のものであるかがわかりづらくなり、その評価はさらに難しくなっていくだろう。「学生の起業を促すプログラムやコース、スタートアップの数や、ベンチャーキャピタルからの資金提供などといったところについても、もっと見ていかなければならない」(Pendlebury氏)

トムソン・ロイターは、約50年に渡って特許データを解析し、コンサルタント業務に携わってきた経験をもとに、イノベーションにおける指標や重み付けを決定している。Pendlebury氏は、「多面的で複雑、そしてダイナミックなイノベーションシステムを判断することは、非常に難しい。どのような指標やランキングであっても、包括的にイノベーションを説明することはできない。しかし我々はベストを尽くしている。イノベーションを定量的に示すことによって理解の一助としたい」と話していた。