三井不動産がLINK-Jをこれほど強力に推進する背景には、“産業を育てることこそデベロッパーの役目”と考えているからだろう。オフィスビルやレジデンスを建設しても、そのビルに入るテナントや人がいなければただの“箱”だ。

そしてもう一点、日本にシリコン・バレーのようなイノベーション豊かな街を誕生させたいというねらいが明白だ。シリコン・バレーはICT企業の集積地で、アップルやHPといった巨大企業を育て上げた。

製薬メーカーが集中する街

もともと日本橋は五街道の起点で、物産の集積地だった。その名残は今でも色濃く残り、三井越後屋は三越デパートに受け継がれ、白木屋は東急百貨店として存続している。呉服屋以外にも乾物問屋が軒を連ね、その姿は今でも健在だ。それ以外に、薬問屋が多かったことでも知られている。複数の製薬会社が日本橋に拠点をかまえているのがその名残といえるだろう。

たとえば山之内製薬と合併してアステラス製薬となった藤沢薬品工業は日本橋に東京本社を置いていた。現在も日本橋アステラス三井ビルディングとしてその本社機能を残している。そして、そこから3区画先に第一三共本社ビルがある。実は日本橋ライフサイエンスビルディングは、その両社に挟まれる区画に立地する。LINK-Jによるライフサイエンス企業の集積地と、日本橋を拠点にする医薬・化学メーカーがこれほど地理的に近い関係となれば、有機的な連携が行いやすくなるだろう。

左:アステラス製薬本社、右:第一三共本社