サイボウズは5月26日、東京本社で第3回目となるkintone hiveを開催した。kintone hiveは、ユーザー同士でアイデアを交換し、経験を共有していこういうイベントだ。今回のイベントでは、東急、ANA成田エアポートサービス、DeNA、京王電鉄バス各社のkintone導入事例が紹介されたが、ここでは、ANA成田エアポートサービスの事例をレポートする。
ANA成田エアポートサービスは、成田空港でANA機や提携海外エアラインのハンドリングを行っている。事業内容としては、利用者のチェックインや案内などを行う旅客ハンドリング事業、荷物・貨物の運ぶグランドハンドリング事業、機器・車両の整備・保守を行うエンジニアリング事業などがある。
講演を行った長谷川純子さんが所属するAMC生産管理部は、生産管理業務として要員数管理や特殊車両数管理のほか、旅客ハンドリング事業やグランドハンドリング事業の費用清算を行う請求業務を行う部署だという。
今回、システムをkintoneにリニューアルしたのは請求業務の部分だ。
同社では、生産管理システムとして「NTON(ニュートン)」という社内システムを10年ほど利用していたという。このシステムには、実績管理、勤務管理、請求帳票作成、車両管理、生産管理など20ほどの機能があり、請求業務もこのシステムを利用していた。
長谷川さんが請求業務を引き継いだ際に前任者から言われたことは、NTONがないと請求業務が行えないということだったという。しかし業務に慣れていくにしたがって、「請求用のデータは自分のところにもあるのに、なぜNTONを使わなければならないのか」「現場で入力したデータをなぜ生産管理部で管理しなければならないのか」「直接データの修正ができない」「項目の削除など請求書のフォーマットを変更できない」などの疑問や不満が生まれたという。
また、月初3日以内に請求業務を終えなければならなかっため、月初は12時まで残業する日々が続いたいう。
長谷川さんは当時を振り返り、「人がNTONを助けている状態だった」と表現する。そのため、「このまま仕事を続けていくのはいやだ」と思い続けていたという。
転機が訪れたのは、NTONの保守作業の契約更新だ。それまでは必要不可欠のシステムとして、社内には契約更新が前提という雰囲気があったが、保守費用の金額が高額だったこともあり、上司を説得。保守契約切れまで4カ月と迫っていたが、システム更新することを決断したという。
システム更新を行うにあたってはフルオーダーやセミオーダーでの構築も検討したが、納期や保守、コストなどを考慮し、kintoneで構築することを決めたという。ただ納期を考慮し、20ほどの機能は、現業継続のための必要最低限の5機能程度に絞ったという。
システムを再構築するにあたっての課題としては、納期の短さ以外に既成概念の壁もあったと長谷川さんは語る。
現場からは、「これまで10年このシステムでやってきたし変更しなくてもいいのではないか」「慣れてるのに」「機能をなくして大丈夫なの?」などの懸念が寄せられたという。また、一番苦労した点は、仕様を決める際、旧システムではなぜこのデータが必要だったのか、どこで利用されているのかを知っている人が誰もいなかったことだという。この点については、最終的に長谷川さんが決断。2カ月の短期間でシステムは完成した。
そして、現場の200名に対する1カ月間の操作教育を行った上で、システムは無事にカットオーバーを迎えた。
開発を終えた長谷川さんはkintoneのメリットとして、汎用性と契約を解除すれば失敗してもいつでも止められる気楽さを挙げた。そして、実際の導入効果としては、システム改修費の40%削減、ランニングコストを85%削減、請求担当者の業務量の20%削減など、大きな成果があったという。
同社では今後、機能拡張としてANAのシステムのデータ取り込むことによる情報の一元化を図っていくという。