これまでのFREETEL

発表会にはプラスワン・マーケティング 代表取締役の増田薫氏が登壇し、これまでの事業戦略を語った。同社が、まず目指したのは大手キャリアの安心感。従来、格安SIMサービスはオンラインでの注文が中心だったため「スマートフォンの実物に触れない」「手続きが難しそう」といった不安が付きものだった。そこで、これを払拭すべくヨドバシカメラ、ビックカメラ、ソフマップなど大手家電量販店に専用コーナーを設置。説明員を常駐させることで、利用者の裾野拡大につなげてきた。即時開通・MNPに対応する店舗は、2016年7月には150店舗まで拡大される見込みだ。

プラスワン・マーケティング 代表取締役の増田薫氏。同社では大手家電量販店に専用コーナーを設置するなどして、サービス利用者の裾野を広げている

NTTドコモ、au、ソフトバンクが提供する”通話かけ放題”に対抗すべく、これまでFREETEL SIM利用者に専用アプリ「FREETELでんわ」を提供してきた。今夏からは、これを全スマホ利用者に提供する予定だ。このほかにも、App Storeにおけるアプリのダウンロード容量をカウントしないSIMサービス「FREETEL SIM for iPhone」など、ユニークなサービスを展開中。ちなみに定額プランは、大手キャリアが実現できない安価な水準を維持できている。なお、新テレビCMはFREETELの料金プランが月額299円(税別)から利用できることをアピールする内容。猫に扮したタレントの佐々木希さんが299円に因んで「ニクキュー」と連呼する(月額299円で利用できるのは、データ通信専用100MBまでのSIMプラン)。

トークセッションに登場したタレントの佐々木希さん。新テレビCMでは、月額299円(税別)から利用できることをアピールする

これからのFREETEL

これまでのFREETELが国内での地盤固めに徹していたのに対し、今後のFREETELが臨むのはグローバル市場だ。アメリカ、中南米の主要国、ベトナム、インドネシア、マレーシア、タイといった東南アジア市場に展開し、ゆくゆくはヨーロッパにも進出。将来的には「10年以内に世界一になる」という目標を実現させる。増田氏の熱い想いの根底にあるのは、日本メーカーの凋落に対する悲しみだという。かつて世界に名を馳せた日本のメーカーは、いまや凋落の一途を辿っている。増田氏は「戦後の日本を復興させたのは、良いモノをつくるという魂。これを復活させたい。日本メーカーとして、海外で勝ちたい」と熱く語る。

増田氏によれば、最近では開発陣が充実してきたとのこと。社員は200名いるが、その約半数が開発者だという。これによりUIや、カメラのソフトウェアも自前で開発できるようになった。同氏は「競合他社にはODMの製品にブランドを冠して売っているメーカーもあるが、それでは本当に良いものは提供できない。私たちは”日本のものづくり”の精神を、しっかりと受け継いだメーカー」と胸を張る。昨年度は30万台だった端末の販売台数も、今年度は100万台を優に超える見込みとなっている。

FREETELと言えば、その安価な利用料金を連想する人もいるだろう。これで会社は儲かるのだろうか。囲み取材で、増田氏は「会社が存続出来るだけの利益が上がれば良い」と回答。その上で「短期的に損得を考える人はセコい、長期的に損得を考える人は賢いという、かつてのコンサルタントの助言を今でも思い出す」との秘話も明かしていた。

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これまでは国内のニーズを汲み取り、サービスを展開してきた同社。製品、サービス、品質が整ったところで、満を持して新CMを展開する。そして今後は、グローバル市場に向けて本格的に舵を取る。日本メーカーの復権を掲げる増田代表の熱い想いに、いち日本人として応援したい気持ちになった。