ザクロの栽培・加工を研究中
森下仁丹のプロジェクトをキッカケに、ザクロ研究会が発足。会長はテクノ・サイエンスローカル事務所 代表の小宮山美弘氏、副会長は山梨大学 生命環境学部 教授の村松昇氏が務める。ザクロ研究会は、国内にザクロの集積栽培地を作ることが目標だ。国内でザクロをいかに栽培するかという栽培方法の研究、収穫したザクロをどのように消費者に届けるかという加工品研究などを進めている。
この試みが成功すれば、山梨県は日本初のザクロ産地となりうる。山梨といえばブドウや桃の産地として有名だが、村松氏によれば「全国的にみて降水量が少ない」「全国的にみて年間日照時間が長い」「水はけがよい」といった点がザクロの栽培にも適しているそうだ。ザクロは、ブドウや桃に比べて病害虫も少なく、管理作業も少なめ。こういったメリットも、新たな山梨県の特産果物として注目される理由のひとつだ。
何にせよ、国内で本格的に栽培されたことがないため、栽培マニュアルもない状態。カリフォルニアから輸入されているザクロのほとんどが「ワンダフル」という品種だが、ワンダフルが山梨の気候に合っているとは限らない。現在はさまざまな品種を試験的に栽培している状況だ。山梨大学生命環境学部附属小曲農場のほか、都留市、甲州市、富士川町の県内各地で試験栽培が行われている。
山梨に適した育て方を研究
試験栽培地のひとつ、山梨大学附属農場を訪れた。附属農場のほとんどでブドウが栽培されているなか、桃やスモモ、梅、ナシ、リンゴなどと並んでザクロも栽培されていた。山梨大学生命環境学部附属小曲農場ではワンダフルのほか、「水晶大実」「キング」「アークデニス」「スイートハニー」といった品種を育てている。庭木として植えられている従来品種に比べて、「果実が大きい」「種子が小さい(もしくは軟らかい)」「成熟しても果実が開裂しにくい」という理由でこれらの品種を選んだ。
附属農場のザクロはそろそろ3年生になるが、まだ実がなったことはない。村松氏は「今秋にはなんとか実ができるのでは」と予測。加工技術の検討などをしつつ、実がなるのを待っている。
加工技術の研究も並行して行う。ザクロは果実のなかに可食部分である「アリル」(種衣)と呼ばれる赤い粒が詰まっている特殊な構造だ。ゆえに、ほかの果物の搾汁方法などを応用しにくい。果実のいちばん外側にある皮を除き、アリル部分のみを取り出して搾汁するのだが、アリル部分のみを取り出すのがなかなか大変な作業。手作業なので当然コストもかかる。山梨県内のザクロ約30kgをかき集めて実用レベルで果汁を試作したところ、全体経費の約70%をこのアリル取得作業が占めてしまったそうだ。
【左】ザクロ研究会でもイラン産の濃縮果汁を用いてワインや酢を試作したことはあったが、国産のザクロを用いて果汁を作るのはこれが初。搾汁自体はパルパーフィニッシャーという機械を使用(提供:ザクロ研究会)。【右】試作した果汁をいただいた。左がアメリカ産ザクロを用いた市販のジュース、右が山梨県産ザクロのジュース |
試作した果汁をいただいたところ、生のザクロに近い味わいで香り高く甘かった。同時に飲んだアメリカ産ザクロを用いた市販ジュースに比べて、あまり酸っぱくない。加工方法が異なるので一概に比較できないが、個人的には試作果汁のほうがおいしいと感じた。色も試作果汁は淡いピンク色、市販ジュースはダークな赤色でかなり異なる。両者の色のちがいを、小宮山氏は「チェリーと似たような傾向」という。たしかに、市販ジュースはアメリカンチェリー、試作果汁はさくらんぼのような色合いだ。