4インチiPhoneと9.7インチiPad Proを投入する理由

後半の「iPhone SE」と「9.7インチiPad Pro」の発表では「4インチiPhoneの新製品を投入する理由」と「9.7インチにiPad Proファミリーを増やした理由」を、それぞれ2つずつ挙げた。

4.7インチのiPhone 6/6sと5.5インチの6 Plus/6s Plusが好調に売上を伸ばしているが、4インチiPhoneに対する需要は根強く、新製品が登場しなかった2015年にも3000万台以上も売れた。理由の1つは、手のひらに収まるコンパクトなサイズを好むユーザーが多いこと。また、Androidからのスイッチャーなど、初めてのiPhoneに4インチ・モデルを選ぶ人が多い。4インチ・モデル購入者全体では1/3以上、中国では過半数になっており、新たなユーザー獲得に大きな役割を果たしている。

中国では4インチiPhone購入者の2/3近くが、初めてのiPhone

価格は399ドル(16GB)からで、普及帯向けのiPhoneという色合いが強いiPhone SEだが、性能や機能の妥協はない。キャッチフレーズは「最もパワフルな4インチ携帯」である。A9プロセッサとM9コプロセッサを搭載し、コンパクトなボディにiPhone 6sと変わらない性能を備え、3D Touchや高速なTouch IDセンサーを除くほぼ全ての機能を利用できる。2012年に初代iPad miniを発表した時にAppleは「隅から隅までiPad (Every inch an iPad)」とアピールしたが、iPhone SEも最新のiPhoneの利用体験を4インチのコンパクトな筐体に凝縮した「Every inch an iPhone」である。

A9プロセッサを搭載し、CPU性能はiPhone 5sの2倍

性能の底上げで、iPhone 5sよりも全てにおいてバッテリー動作時間が向上

4インチiPhoneでも「Apple Pay」が利用可能に

米国では16GBが399ドル、64GBが499ドルと、普及帯のAndroid端末と競争力のある価格

iPad Proを9.7インチに拡げる理由の1つは、タブレットとしてバランスが良く、最もポピュラーなサイズであるからだ。Appleは、iPad Proを「パーソナルコンピューティングの未来」と位置づけており、タブレットコンピューティングの第2の波として9.7インチ・タブレット市場で大きな需要を掘り起こせると期待している。

もちろん重くなったり、逆にProモデルの性能を発揮できなかったら、9.7インチにProを拡げる意味が損なわれる。9.7インチiPad Proは、iPad Air 2と同じサイズ・重量で、A9Xプロセッサを搭載し、Proアクセサリをサポートする。iPadの売れ行きが低迷し始めた理由の1つとして、iPhoneに比べて長い買い替えサイクルが指摘されていたが、既存の9.7インチiPadユーザーに買い替えを促す魅力的なアップグレードだ。また、広色域ディスプレイやTrue Toneディスプレイ、12メガピクセルのiSightカメラ、Live Photosサポート、Tune Toneフラッシュ、4K HDビデオ撮影、5メガピクセルのFaceTime HDカメラなど、12.9インチiPad Proのユーザーにも魅力的なスペックになっている。

片手でも扱える9.7インチ・サイズにiPad Proの性能を搭載

Appleはこれまで2億台を超える9.7インチiPadを販売しており、9.7インチiPadは既存のiPadユーザーにとって「究極のアップグレード」とアピール

環境光センサーを使って、周囲の光に合わせてディスプレイの色と明度を自動的に適応させるTrue Toneディスプレイ

もう1つの理由として、Windows PCユーザーを挙げた。近年はWindowsの2-in-1デバイスが伸びており、むしろiPadが市場を食われていると報じられているが、AppleによるとWindows PC市場では5年以上も前の古いデバイスが6億台以上も使い続けられている。そうしたWebブラウジングやメール、SNSなどにしかPCを使っていないユーザーは、高性能で多機能なデバイスを求めてはいない。むしろシンプルで、App Storeが充実していて、プロ向けのアプリも使用できる性能を備えたiPad Proがスイッチャーの受け皿になれると考えている。

9.7インチiPad Proは「究極のPCからの乗り換え」になる?