アークレイは3月9日、京都大学との共同研究によりヒトiPS細胞から膵島細胞の高効率作製に成功したと発表した。

同成果は「第15回日本再生医療学会総会」の付設展示会で紹介される予定。

血糖値を下げるインスリンは、膵臓内の膵島で産生・分泌される。膵島が障害を受けてインスリン分泌が枯渇すると、慢性的な高血糖となり、その状態が続くと腎不全や網膜症などの合併症を引き起こす可能性がある。障害を受けた膵島は再生できないため移植治療が必要となるが、ドナー不足により治療が思うように進んでいない現状がある。そのためヒトiPS細胞やヒトES細胞を用いて人工的に膵島を作製・利用する再生医療に期待が寄せられているが、移植治療に十分な量の膵島細胞を作製する方法や品質のバラツキが少ない作製方法の開発が課題となっている。

こうした課題に対し、アークレイは2014年にヒトiPS細胞を1個から培養可能な流路型の超小型培養装置の開発に成功するなどしている。

今回の研究では、新たにヒトiPS細胞の流路型培養システムを開発し、ヒトiPS細胞から膵島細胞を作製することに成功した。同システムは培養環境を物理的に制御することができ、同一構造を多数作成することで容易に培養規模を拡大することができる。現在、培地交換や温度管理、CO2濃度管理を全自動化した培養システムを開発中とのことで、大型化・自動化に加えて膵島以外の細胞腫への応用も検討していくとしている。

ポータブル培養装置

流路デバイス(上)、ウェル付流路チップ(下)