市場調査会社である米Gartnerは2016年1月末に2015年の世界半導体購入企業ランキングを発表した。

これは各電子機器メーカーの"Design TAM(Total Available Market:設計総有効市場)基準の半導体需要を示すものとなる。Design TAMはGartnerが半導体ベンダの顧客である電子機器メーカーの半導体購入量を示すために用いている指標で、それぞれの電子機器を設計する段階における半導体需要を指している。

2015年の世界半導体購入額ランキングの上位10社の合計は、1230億ドルに達した。これは、世界の半導体消費合計の約36.9%に相当するが、2014年の約37.9%からは1.9%減少する結果となった。半導体購入費額ランキング上位10社のうち7社は、2015年の半導体需要が2014年と比べて減少した。

表 世界の電子機器メーカー上位10社の2015年半導体需要(速報値、デザインTAM基準。単位:100万ドル) (出所:Gartner)

韓国Samsung Electronicsと米Appleが、5年連続でそれぞれ首位と第2位を獲得した。両社の半導体購入額の合計は、2014年と比べて8億ドル増加し、世界全体の18%に相当する約590億ドルに達した。

Appleは、業界全体の購入量が前年比マイナスになるなか、前年比で7%ほど購入量を増加させたが、これは2015年第1~3四半期の需要を反映したものであって、11月以降は購入量を大きく減少させている。そのため、同社を最重要顧客とするSamsungやソニーの半導体業績が急激に悪化している。

Samsungの半導体購入量成長率は、2014年および2015年の半導体市場全体の成長率をも下回っている。世界有数のPCベンダであるLenovoもDellもHewlett-Packard(現HP)もマイナス成長である。Gartnerは、「半導体ベンダにとって最大級の顧客からの売り上げが減少するリスクが高まっている。電子機器市場では、人気の上昇と衰退のサイクルがますます短くなってきていることから、大手企業にとっては、その地位を長期にわたって維持していくことが非常に難しくなっている。現在の勝者が、必ずしも将来勝ち続けていくことができるとは限らない」と分析している。

さらには「多くの半導体ベンダ、特に汎用チップのベンダはSamsungやApple、Lenovoといった限られた超大手顧客への依存度を下げ、ロングテールの小規模顧客へと販売先の多様化を図り、マスマーケティングのアプローチによって事業の成長を安定化させようとしている」との見方を示している。

半導体購入トップ10から消えた東芝

20015年、Hewlett-Packardがエンタープライズ事業部門をスピンオフし、5位のHPと8位のHewlett-packard Enterprse(HPE)にスプリットしたため、この余波で、東芝が上位10社から脱落してしまった。2015年の東芝のDesign TAMは46億ドルだったことから、2014年の上位10社(分社前のHP、東芝を含む)であったメーカーの2015年における需要を合計すると1276億ドルとなり、世界の半導体消費合計の38.2%を占めている。

トップ10社の中で、中国で急成長するスマートフォンベンダのHuawaiだけが、前年比16.2%と驚異の2桁成長をとげたことは特筆に値しよう。同社は、中国SMIC, 米Qualcommなどと共同で上海に新設された半導体研究開発企業(ベルギー研究機関imecが提供する14nm半導体プロセスを実用化するためにSMIC工場内に開設された企業で、いわばSMICの研究部門)に投資して、将来の半導体調達先を今から確保している。

日本勢で唯一、トップ10に留まっているソニーの2015年の半導体購入額は、69億4700億ドル(前年比9%減)で、順位を昨年の6位から1つ落とした)。これは円ドルの為替レートが2014年比で10%以上円安ドル高に動いたためで、円ベースでの計算をしなおすと3%程度のプラス成長になると思われるが、Gartnerは円ベースでの数値を公表していないので、あくまで推測の域は出ない点に注意が必要である。