前回の記事で、Windows 10のユニバーサルWindowsアプリ不足について言及した。それにMicrosoftが即応したわけではないと思うが、1月13日(米国時間)に、FacebookアプリがContinuum for Phoneに対応し、Wireless Display AdapterがUIを大きく刷新するなど、変化が生じている。

ユニバーサルWindowsアプリ化した「Facebook」。Continuumをサポートした

そこで今回は、UWP化したリモートデスクトップ接続アプリケーション「Remote Desktop Preview」に注目したい。Remote Desktop Previewの最新版・バージョン844では、Windows 10 MobileやContinuum for Phone、特殊キー(Alt + Tabなど)の送信を新たにサポートした。

その使い勝手は従来のリモートデスクトップ接続と同じため、一見するとアピールポイントに欠ける。だが、RDゲートウェイ経由のアクセスやRemoteFXのサポート、タッチ操作のサポートを実現している。従来のデスクトップアプリ版と比べると、直感的な操作が可能になったのが大きな特徴だ。

「Remote Desktop Preview」では、Windows 10 MobileやContinuum for Phoneをサポートする

Windows 10 MobileからSurface Pro 4のWindows 10に接続した状態。デスクトップ上部の「…」を押すとチャームバーが開く

現時点ではWindows 10 Mobile側で日本語キーボードが選択できず、日本語入力は難しかった

接続直後はキャッシュを作成しているのか、応答するまでに時間を要したものの、10秒ほど待つとIEEE 802.11gのWi-Fi環境でも比較的スムーズにWindows 10のデスクトップを操作できた。執筆時点ではContinuum for Phoneをサポートするデバイスが国内に存在しないため検証できないが、海外ニュースによるとLumia 950からContinuum for Phoneでディスプレイに接続し、その上でRemote Desktop Previewによるリモートデスクトップ接続が可能だったという。

接続履歴やIPアドレス(やコンピューター名)とともに、デスクトップのスクリーンショットが残される。これはなかなかわかりやすい

これだけでは「リモートデスクトップ接続のUWP化」という話だが、ポイントはRemote Desktop Protocol(RDP)の改善にある。公式ブログの解説によれば、Windows 10およびWindows Server 2016 Technical Preview 4はRDPバージョン10.0に対応。4Kディスプレイの台頭を踏まえて、高DPI環境を考慮した自動サイズズーム機能や、H.264/AVCによる圧縮を実現したそうだ。今後はRemoteFX vGPUシナリオ上のOpenGLサポートを予定しているという。

RDP 8.1以前とRDP 10.0のレンダリング結果

上図はRDP 8.1以前とRDP 10.0のレンダリング結果をMicrosoftが示したものだが、筆者が説明するまでもなくテキスト描画が改善し、見やすくなっている。気になるのは、今回のRemote Desktop PreviewがRDP 10.0に対応しているかという点だが、クライアントのビルド番号がPowerShell上で示されなかったため、確認できなかった。ただし、先の公式ブログにある方法でイベントビューアーを確認すると、RDP 10.0によるセッションを確立していることがわかる。なお、今回はSurface 4 Proをサーバーとした。

Continuum for Phoneは面白い技術で興味が尽きることはない。だが、RDPを利用して、スマートフォンからPCをコントロールするというアプローチはさまざまな可能性を実現することだろう。個人でRDゲートウェイを設置するのは難しいが、Windows 10とWindows 10 Mobileを揃えることで、今後のビジネスシーンはクラウド経由のファイルやデータ共有に加えて、アプリケーションの実行など利用場面が拡大していくのではないだろうか。2016年中には、多くのアプリケーションがUWP化し、PCとスマートフォンの連係を高める環境を期待したい。

デスクトップアプリ版はバージョン情報でRDP 10.0をサポートしていることを明示している

Remote Desktop Previewから接続した際のイベントログ。「RemoteDesktopServices-RdpCoreTS」のイベント162にAVC 444使用の有無が示される。「AVC対応」が「1」場合は有効、無効の場合は「0」だ

阿久津良和(Cactus)