米ラスベガスで開催されたCES 2016。主催者の名前はConsumer Electronics Association(CEA)からConsumer Technology Association(CTA)へと変わり、エレクトロニクスの範疇を超えた新たな業界の出現を彷彿とさせる。何せ「家電協会」から「民生技術協会」へと名称が変わったのだ。良くも悪くもこのことは今年のCESを象徴しているともいえる。

2016年も現地時間1月6日から9日まで、米ラスベガスでCES 2016が開催。今年、その主催者の名前はConsumer Technology Association(CTA)へと変化した

その2日目朝の基調講演はDr. WP Hong(President Samsung SDS)氏によるものだった

Samsung SDSは韓国サムスン・グループ傘下のITサービス会社で、サムスン電子内のITサービスをすべて担っている。こうした立場の人物が、CESの基調講演に抜擢されるのはちょっと新鮮だ。新型の冷蔵庫やTV以外の話が聞けるかもしれないと思って足を運んだ。

Dr. Hongが訴求したのは「モノのバッテリー」だ。「モノの」とくれば「インターネット」が続く、いわゆるIoT(Internet of Things)は、現在のITトレンドを象徴するキーワードだが、その前に考えなければならないことがあるとHong氏はいう。

基調講演で登壇するSamsung SDSのDr. WP Hong氏

今や、どこの家庭にもスマートデバイスがある。スマートデバイスはこれから普及するものというよりも、すでに広く普及しているのだ。ところがそれらは通信ができない。IoTを前提に考えると相互の接続性が求められる。そして、その通信そのもののヘルスケアを考えたときのエネルギー効率を左右するのはバッテリだ。

Hong氏はエコフレンドリーなバッテリという表現をするが、IotはAlways Onが前提で、決して眠らないという。だから信頼のおける電源が必要だと。それによってブラックアウトを回避する。それが「モノのバッテリー」の時代だ。IoTという雲をつかむような表現よりも、実に具体的だ。

サムスンの基調講演にはマイクロソフトからゲストとしてTerry Myerson氏(オペレーティング システム エグゼクティブ バイスプレジデント)が登場し、サムスンが発表したばかりの新型タブレットGalaxy Tab Pro Sを使ってWindows 10をアピールした。

ゲストで登場した、米MicrosoftのTerry Myerson氏。コルタナとIoTを活用したデモンストレーションを披露した

そのデモでは、Windows10とIoTにスポットライトがあてられていた。コルタナに洗濯機が動いているかどうか、あとどのくらいで洗濯が終わるかを聞く。コルタナにうちに今誰がいるか、洗濯機に何が入って洗われているかを聞く。また、息子のビリーがひとりでいるときにどんな電化製品を使っているかを問い合わせる。すると、ビリーはずっとTVを見ていて、冷蔵庫がひっきりなしにドアを開け閉めされていることがわかったりする。これはきっとアイスやジュースを飲み食いし続けているにちがいないといことだ。

各機器が通信できなければデモであったようなコルタナとの会話は成り立たない。こうして、人々の生活の中でテクノロジーの役割が変化しつつあることをHong氏は強調した。

もう何十年も見慣れてきた家電製品が、その「民生技術」によって再定義されようとしている。今年のCESはクルマ関連の出展も目立ったが、そこでも自動運転等、クルマの再定義がアピールされていた。

今から10年前のことを思っても、今とそんなに大きな違いはなかったように思う。でも10年後はどうだろう。東京オリンピックを5年後に控え、それが終わった5年先の未来である。そこではかたちあるものが再定義され、かたちなきものと融合しているだろう。今年のCESは、その変化の節目としてあとで振り返られることになりそうだ。