アイデアを形にできる時代はベンチャーに最適

程氏が事業を展開する中では、製品化されなかったアイデアも多くある。また、同世代のエンジニアたちと共に働こうと声をかけたものの、叶わなかったということもあるという。

「中には現在の人気サービスを生み出した人が何人もいます。サービス内容を見ると、私も考えていた、自分でもできたと思うこともあります。ただ、私にはすでに展開しているビジネスがあり、そちらの立場から手を出すべきではないと考えた分野でもあるわけです。そうしたサービスが盛り上がっているのを見ると、自分のアイデアを見る目は確かだなと自信を持ちます」と程氏。

そんな程氏は、現在の日本で起業するベンチャー企業が増えていることを高く評価している。「ここ1~2年、国内投資の活発化を感じていますし、ベンチャー企業が増えるというのはよいことだと思います。安定志向から脱出し、クリエイティブな時代になったということではないでしょうか」と語る。

現在では大企業となった日本企業も、創業時は小さな企業だったはずだ。次々といろいろな企業が誕生し、成長し、国際的に展開して行く。そうした流れの入口にあるのかもしれないともいう。

「ベンチャー企業が多くなることで、もう一度そういう時代が来るかもしれません。ソニーや松下(現 パナソニック)が誕生したような時代がもう一度こなければ、日本の未来は危ないでしょう。今は3Dプリンタがあり、いろいろなパーツも入手しやすく、クラウドファウンディングを利用することもでき、起業のハードルが下がっています。今はアイデアがあるなら、作ればいい時代です」と自分たちの起業から現在に至るまでの流れを振り返りながら程氏は語ってくれた。

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程氏が語ることがすべてではないが、特にここ数年の日本国内事情は起業しやすい状況が整いつつある。もちろん他に秀でたアイデアや製品であることは言わずもがなだが、その背景となるは3Dプリンタやクラウドサービスに代表されるようなものづくりプラットフォームとサービス基盤、クラウドファンディングや官民を挙げたベンチャーキャピタルの存在などだ。

一方で、GoogleやFacebookに匹敵するような、あるいはUberやAirbnbのように市場からの資金流入を背景に非上場ながら企業価値が10億ドルを超える"ユニコーン"と呼ばれる存在もまだ日本では生まれていない。GDP規模やサービス市場などの国の違いを考えれば、単純に起業価値で比較すべきことではないし、また日本の"ユニコーン"を目指すべくIPOを避けるべきという話ではないが、ただ、日本の起業シーンに新たな発想や見方を取り入れるためにも、国外からの視点があってもよい。

ここまで取り上げたITベンチャーとは異なるが、京都発 弁当箱専門店「Bento&co」は、フランスから来たBERTRAND THOMAS氏が京都で立ち上げた。日本人なら誰でも知っている"弁当箱"は今やヨーロッパにも広がっている。2020年の東京オリンピックに向けて日本への注目は集まっている。観光旅行だけにとどまらず、日本の持っている技術などビジネスの場としての発信も重要となってくるだろう。